2024/11/09

52歳が筋トレしても、22歳が筋トレしても、筋肉が受けるダメージは同じ ー 新研究の紹介

 













国際スポーツ医学ジャーナルに発表された研究(*1)によると、トシをとると筋肉のダメージが大きくなるとか、回復に時間がかかるとか、だから筋トレの強度と頻度は控えめにしましょうって話はウソだったらしいです。

*1. Acute Inflammatory Response to Eccentric Exercise in Young and Master Resistance-trained Athletes
https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/abstract/10.1055/a-2348-0238

研究では平均年齢22歳の若者グループ8人と平均年齢52歳のおっさんグループ8人に分けて、それぞれのグループからスクワットの記録が似通った者同士をマッチングしました。
そして、1-rep maxの70%でスクワットを10回行ってもらい、筋肉のダメージ、炎症、そして回復の変化を筋トレ直後から72時間後になるまで追跡しました。

筋トレ後のダメージはどちらのグループも同程度でした。同じような炎症が起き、24時間後からは同じように回復していきました。

22歳でも52歳でも、筋トレしたら筋肉痛になるのは当たり前。同じように筋繊維は破壊されるし、若ければ早く治るわけではないし、トシをとると治りにくくなるわけでもないそうです。

俺もトシだから、もう若いときのようにムチャな筋トレはできないよ。そんなことを口走ったことがある人は反省しないといけないようです。もし以前より回復が遅くなったと感じているとしたら、それは単にトレーニング不足なのかもしれません。自戒を込めて。




2024/11/04

ぶっ倒れるまでの筋トレはパフォーマンス向上には適さない。見た目には良い。ー新研究の紹介

 













ワークアウトの後でジムの床にぶっ倒れたことってありますよね? ベンチプレスでバーベルが胸から挙がらなくなって、助けてくれ~って叫んだことがありますよね?

でもこれって、パフォーマンスを上げる効果はあまりないらしいです。より正確に言えば、挙がらなくなる限界まで筋トレを行う方法はとくに筋力を増加させない、ただし筋肥大効果はあるって結論を述べた研究(*1)が発表されました。

*1. Exploring the Dose–Response Relationship Between Estimated Resistance Training Proximity to Failure, Strength Gain, and Muscle Hypertrophy: A Series of Meta-Regressions
https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-024-02069-2


フロリダ・アトランティック大学の研究者を中心とした論文著者グループは筋トレに関する既存の研究を統合分析し、運動中に運動者がどの程度筋肉の限界に近づいたか、またそれが結果にどのような影響を与えたかを調査しました。

その結果、筋力をつける目的に関しては、筋肉が完全に限界に達するまで自分を追い込むか、あと数回の反復回数を残してセットを終えるかは、大きな違いを生まないことが分かりました。しかし、筋肉の成長に関しては、限界に近いトレーニングの方が有利であるようです。

筋トレを行う理由は人によって様々です。ボディビルダーのように身体をデカくしたい人はぶっ倒れるまでやった方がいいようです。スポーツのパフォーマンスを高めたい人は、あと数回はできるなってくらいで留めておいた方が良さそうです。逆のように聞こえるかもしれませんが。




2024/11/02

エキセントリック動作はストレッチより筋肉の張りを減らす ー 新研究の紹介

 













あらためて述べるまでもないことですが、筋トレをすると筋肉が張ります。可動域は狭くなりますし、痛みを伴うこともあります。同じ部位の筋肉に続けて負荷をかけることは避け、筋トレ間に適度に休息日を設けることが望ましいのはそのためです。

休息日にまったく動かないか(完全休養)、あるいは軽い運動やストレッチを行うか(積極的休養)かはその人次第です。

ところが、エキセントリックのみの筋トレ動作にはハムストリングス筋肉の張りを減らす効果があることを、同志社大学の研究者らが発表しました(*1)。


*1. Can Eccentric-only Resistance Training Decrease Passive Muscle Stiffness while Increasing Size and Strength of Hamstrings?
https://journals.lww.com/acsm-msse/abstract/9900/can_eccentric_only_resistance_training_decrease.577.aspx


エキセントリックとは筋肉を伸ばしながら力を発揮する「伸張性筋収縮」のこと。俗に言う「ネガティブ動作」です。バーベルを上に持ち上げるのはコンセントリック、下に下げる部分がエキセントリックです。

この研究で採用されたのはStiff Leg Deadliftと呼ばれる種目です。 膝を少しだけ曲げたままで行うデッドリフトのことですが、研究ではとくにバーベルを下げる動作のみを行いました。

被験者に選ばれた36人の健康な男性たちは、その動作を10回3セット行うセッションを週2回もしくは週3回課せられるグループに分けられました。期間は10週間で、挙上重量は体重の60%,70%,80%と徐々に増やされました。

10週間後、両グループともハムストリングスの筋肉サイズと筋肉は増え(当然ですが)、週3回グループは筋肉の張りが大幅に減少しました。つまり、筋トレをより多く行った方が、筋肉の張りが減ったというわけです。

どうやら筋トレ後の回復方法はストレッチに限らなくてもよいようです。なにか、二日酔いには迎え酒が効くって言われている気がしなくもありませんが。