2019/06/08

クロスフィットが専門分野トレーニングも外部に丸投げ。アウトソーシング化の流れは止まらず


クロスフィット本部から上のようなメールを受け取った人は多いのではないでしょうか。

ウェイトリフティング、ジムナスティック、などの専門分野のセミナーがこれからは"CrossFit Preferred Courses"になるというお知らせです。

いつもの通り、本部からのお知らせはわかりにくい表現が多いのですが、要するにこれからは、こうした専門分野のセミナーはクロスフィット直営ではなくなり、それぞれのエキスパート(SME - Subject Matter Expert)たちに運営を丸投げしますよ、ってことです。

ゲームズからリージョナルを廃止して、全て外部のイベントを認定するようにしたことと似ていますね。

今後はクロスフィット本部はSMEを認定して、年間5000ドル徴収して、あとはどこでセミナーをやろうが、どれだけ料金をとろうが、コースの内容をどのように変えようが、すべてSMEに任されることになります。

今まではセミナーの収益は70対30の割合で、クロスフィットの取り分が30%でした。これからはSMEは全額自分のものになる代わりに、年間5000ドル払わないといけないし、宣伝や集客にクロスフィットの助けを得られなくなります。
いわば、こうしたセミナー運営者もボックスオーナーと同じような扱いになるってことですね。

競争原理が働くことで、人気のある分野には複数のSMEが参入することもあるでしょうし、逆に採算が取れないクラスはなくなるかもしれません。

今のところ、現在あるコースはそのまま続くようですが、これもまた将来はどうなるのか予想がつきません。

私個人的にはウェイトリフティングのセミナーは受講してとても良かったと思っています。でも、あのクラスは人気があるから、今後は値上がりするかもしれませんね。

2019/06/07

クロスフィットがフェイスブックに喧嘩を売るわけ


524日にクロスフィットがフェイスブックとその傘下のインスタグラムから全ての公式アカウントを削除したというニュースは多くのクロスフィッターを驚かせました。

クロスフィットは初期のころからソーシャルメディアとは密接な関係にありました。そもそもクロスフィットなるものを知ったきっかけがソーシャルメディアだったという人も多いでしょう。かく言う私もその1人です。

2週間たった今でも、状況は変わっていません。どうやらクロスフィットのフェイスブック離れは本気のようです。クロスフィット本部ウェブサイトの公式発表ではフェイスブックがメンバーのプライベート情報を恣意的に利用していることを理由に挙げています。

同じようにフェイスブックのプライバシー管理に不満を表明する会社や組織は数多くありますが、実際に反対行動に出た会社はさほど多くありません。

そのため、クロスフィットが取ったこの行動はスポーツやフィットネス関係以外からも広く注目を集めています。一般大手マスコミはもちろんのこと、ついには最も権威がある経済専門紙のWall Street Journalまでもが特集記事(528日付: https://www.wsj.com/articles/crossfit-leaves-facebook-11559085441)を掲載しています。

ところが、どうも日本のマスコミはこの話題を無視しているようです。NHKも朝日新聞も日経新聞も報道した気配はありません。

日本ではクロスフィットの知名度がまだ低いからだよ、という側面もあるでしょうが、インターネットの巨人であるフェイスブックに喧嘩を売る会社が現れたことの意味をわかっていないのではないだろうか、と他人事ながら心配にもなります。
  

Banting 7 Day Meal Plansとは?

今回の騒動のそもそものきっかけとなったのは、クロスフィットとは無関係の「Banting 7 Day Meal Plans」というフェイスブックの1グループが一旦削除され、しばらくして復活したという出来事です。
このグループを主宰しているのは南アフリカにある同名の会社あるいは組織で、160万人と言われるメンバーの多くも南アフリカの人で占められています。
今回のことがあるまで、殆どのクロスフィッターは「Banting 7 Day Meal Plans」の名を耳にしたことはなかったでしょう。私も全く知りませんでした。南アフリカ? あまりクロスフィットと関係が深そうには思えません。
このグループは一言でいえば、低炭水化物、高脂肪の食品レシピの情報を交換する場です。加工食品はなるべく使用せず、出来るだけ自然の食品を選択することを勧めています。彼らはあまり運動には関心がなく、食生活を改善する主要な目的はダイエットのようですが、食品に関してはクロスフィットが推奨する栄養学と共通する部分が多い団体です。
このグループのメンバー情報がフェイスブックによって恣意的に政府や大手食品会社などに使われている、クロスフィットのメンバー情報も同じ目に会う前にオサラバしよう、クロスフィットのボス、グラスマンのおっさんはそう考えたらしいです。

グラスマンの真の敵は?

今年になってからクロスフィット本部のウェブサイトが刷新され、健康や食品に関する情報がメインに取り扱われるようになりました。中でもBattlesというセクションにはクロスフィットが抱えている数多くの訴訟についての説明がこれでもかと掲載されています。
訴訟の相手の多くは政府機関、食品会社、学術団体、グラスマンが「敵」と呼ぶ権威です。グラスマンによれば、彼らのせいで現代人は間違った栄養学や常識を刷り込まれ、多くの疾病の危機にさらされているということです。

もちろん、フェイスブックから離れた理由についても説明があります。
https://www.crossfit.com/battles/crossfit-suspends-facebook-instagram
クラスマンの主張が正しいか否かはともかくとして、最初にフェイスブックのやり玉に挙がったのが食と健康に関してクロスフィットと同じ思想を共有するグループでなければ、クロスフィットがフェイスブックから離れるという事象にはつながらなかったのではないか。そんな気がします。プライバシー云々は後付けの理由ではないかとまで疑ってしまいます。

 フェイスブックから離れることによる影響は?

削除される前のクロスフィット関係グループのメンバー数はおよそ以下の通りでした。
クロスフィット本部フェイスブック:310万人
クロスフィット・ゲームズのフェイスブック:270万人
クロスフィット本部インスタグラム:240万人
クロスフィット・ゲームズのインスタグラム:280万人

つまり、全部合わせると、クロスフィットは約1000万人のファンに情報を発信するチャンネルを失ったということになります。
ツイッターとYoutubeはそのまま残っているとは言え、短期的にも将来的にも、マーケティングやブランドに与える影響は大きいと言えるでしょう。

もちろん、そんなことはグラスマンのおっさんもわかってはいるはずで、彼が言う「真の敵」との闘いが持つ意味はそうした経営的な損得勘定より優先するようです。

クロスフィットに続く会社はあるか?

そうなりますと、次なる問題はクロスフィットに同調してフェイスブックから離れる会社はあるか? です。
今のところ、そのような目立った動きはありません。フェイスブックにはプライバシーに関して重大な問題があることは承知していても、それでも顧客とのチャンネルを失うわけにはいかない、そんな会社が殆どのようです。そのことは、クロスフィットのボックスの多くまでもが今でもフェイスブックを利用し続けていることからでも容易に想像出来ます。

もしグラスマンのおっさんが暴走老人と化して、「クロスフィットのアフィリエイトでいるためにはフェイスブックの利用を禁じる」なんて条件を作るようなことがあれば話は別ですが、多分そこまでは出来ないでしょう。ただ、良くも悪くも業界のバッドボーイであり続けたグラスマンのこと、将来に何が起きるかは誰にもわかりません。

2019/06/06

ドーピング違反者の素晴らしいコメント

クロスフィット・ゲームズでまたドーピングによる出場停止処分を受けた選手が出ました。
Lauren Herrera と Chantelle Loehnerの2人の女性アスリートで、ともに今後4年間はクロスフィットの競技に出ることは出来ません。

https://www.boxrox.com/top-crossfit-athletes-doping-bans/

ドーピング検査の方法内容、またその罰則の妥当性については、僕にも色々考えることがありますが、今回はそれより何よりChantelle Loehnerさんが発表したコメントがとても素晴らしいと思えたので、ここで紹介したいと思います。

角谷訳:
前略
「このプロセスの中で私を愛して支持してくれた人達に感謝します。同時に、私を支持しなかった人達に対しても、私には憎しみはありません。私の人生におけるこの瞬間が私と言う人間を決めつけさせはしません。傷つき、失い、怒り、そして恨み、これらすべての感情は一時的なものだと信じています。」


「この出来事から得るものがあるとしたら、それは私は今より良い人間になる努力を続けることが出来るということです。それが何を意味するかは今はわかりませんが、私はけっしてあきらめません。前を向き、胸を張って、これからの人生を歩んでいきます」
原文:
I appreciate those who have supported and loved me through this process, and I cast no hate or judgment to those who have not. I will not let this moment in my life define me as a person. I am confident that these feelings of hurt, loss, anger, resentment, and everything else are only temporary.
If anything it has helped me realize that I am capable of so much more and can continue to be successful in my journey. I don’t know what that looks like or what that means right now but I will never quit. With that, I will hold my head high and seize every future opportunity that crosses my path ”
自己弁護もしなければ責任転嫁もしない。感謝はしても同情を引こうとはしない。
すごいアスリートだからメンタルも強いのか、それとも強いメンタルを持っているからすごいアスリートになれるのでしょうか。

まあ最初からドーピングしないのが一番素晴らしいのでしょうけど。


2019/06/02

クロスフィットしなかったらマラソンで自己新が出ちゃった。Crossfit Enduranceは間違っていたのか?

もう6年も前になりますが、Crossfit Enduranceのことについて、このブログに下の記事を書きました。

 Crossfit Endurance - クロスフィットでマラソンを走る?

マラソン練習といえば、月間○○キロ!みたいにひたすら長距離を走るのが主流だったのに対して、走るのは週2、3回にとどめて、残りの日はクロスフィットのトレーニングをしましょう、走る日も長距離だけでなく、短・中距離のインターバル走を多くやりましょう、そっちの方が持久力を高めるし、速くなるし、怪我もしなくなりますよ、って趣旨でした。

そのときのタネ本はこれでした。



https://www.amazon.com/dp/1937715140/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_RJ-8Cb0GKME9C


 この本に書かれたやり方に従って、100キロのウルトラマラソンを走ってみましたし(型破りウルトラマラソン攻略法)、フルマラソンも毎年のように出てきました。確かに怪我は全くなく、レースの後の回復力も格段に上がりました。

 だけど、フルマラソンのタイムは6年前に出した3時間30分を最後に、一向に伸びませんでした。もちろん、46歳から52歳になった加齢のこともあるでしょう。普通にしていたら、トシを取れば、タイムが落ちるのは当たり前です。

 ですけど、皆さんご存知の通り、クロスフィッターは普通ではありません。いくつになっても自己新を更新する人は珍しくありません。僕自身もクロスフィットの他の種目、例えばオリンピック・リフティングでも、スクワットやデッドリフトのようなパワー系でも、マッスルアップや逆立ち歩きみたいな体操系でも、全て自己新が出ているのに、ランニングだけは足踏みっておかしいじゃないかって思い始めました。

 そこで、期間限定ながらも、クロスフィットを封印して、伝統的な長距離ランナーの練習方法を試してみることにしました。今年のオープンが終わった3月後半から2か月間、ただひたすら走る練習をやってみたのです。その間、クロスフィットはマッスルアップとかのスキル練習をするだけで、ウェイトをつけたトレーニングは一切やりませんでした。

今回のタネ本はこれです。


https://www.amazon.co.jp/dp/4047316261/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_WK-8CbPF3KTNC

 すると、どうでしょう。Crossfit Endurance を6年間やって1度も破れなかった3時間30分の壁をいとも簡単に越えて、3時間26分台のタイムが出てしまいました。陸上競技経験者から見れば笑ってしまうようなタイムですが、自己新記録には違いありません。

 これには困りました。走ってばかりじゃ速くならないよ、とか、走ってばかりじゃ怪我するよ、って散々言っておきながら、実際に試してみたら全く逆の結果が出てしまったのです。

 さらにフルマラソンを走って1週間も経たないうちに、30キロのトレイルラン・レースに出てみましたが、ここでもかってないほどの調子で走ることが出来ました。ケガも疲労も全くありません。タイムはともかく、回復力だけはエリートランナー並みについてきました。

 今まで、僕がやってきたこと、言ってきたことは間違いだったのかもしれません。

 結論を出すのはまだ早いとは思っています。2か月間クロスフィットをやらなかったからと言って、それまで積み上げてきた成果がゼロになったわけではありませんから。

 今のところの僕自身を納得させている仮説は、普段はCrossfit Enduranceのやり方で体を鍛えて(オフ・シーズン)、レース前の数か月だけはランニングに集中する(プレ・シーズン)のが、マラソンで自己新を出すには最も効果的な方法なのではないかってところです。