2019/02/16

オープンワークアウト Retestのススメ


いよいよ2019年オープンが始まります。

私は飽きもせずに今年もエントリー済み。2012年から始めて今年で8年目です。
ゲームズ本選どころか年代別トップ200人にも遠く及ばない成績なのですが、それでも毎年少しづつ順位比率(percentile)が上がり(周りが齢で衰えているから?)、7年間x5週で合計35回のワークアウトを1回も逃したことがないのがささやかな誇りでもあります。

7年間と言えば、その頃生まれた赤ちゃんが小学校に入ります。それだけの長い間となれば、ケガをしたり、仕事で忙しかったり、私生活に問題が発生したり、あるいは単に飽きちゃったりしそうなものですが、幸いなことにそのどれも私にとっては決定的な障害にはなりませんでした。ヒマだという要素がかなり大きいですが。

さて、そんなことをあちこちで言ったり書いたりしているせいでしょうか、「今回初めてオープンに挑戦するのですが、何かアドバイスをしてくれませんか?」という質問が殺到しております、というのは嘘です。誰も聞いてくれません。だけど、それでもあえて勝手に誰が聞いてくれなくてもアドバイスをするとしたら、

「オープン・ワークアウトは2回(できればもっと)やりなさい」

と大書しておきます。

私だけがそう言っているのではありません。2011年と2012年にゲームズを連覇した偉大なチャンピオン、Annie Thorisdottirも下の記事で、オープン・ワークアウトは複数回やるべき(retest)と述べています。

なぜなら、9分9厘、同じワークアウトなら2回目の方がスコアが良くなります。仮にそうでなければ、2回目のスコアを提出しなければ良いだけのこと。失うものは何もありません。得るものは筋肉痛だけかもしれませんが。

1回目より2回目の方がテクニックが上達することもありますが、それより自分のペースが掴めるからという面が大きいと思います。過去のワークアウトのリピートを例外として、オープンワークアウトは誰もが初めて行います。最初に飛ばし過ぎてしまったり、あるいはその逆だったり、なかなか最適なペースでワークアウトを行うことは難しいものです。
どのようなワークアウトであれ、最初から最後までハイペースでこなせるのは一握りのトップアスリートだけ。普通の人は大なり小なり時間内に休まなくてはいけないのですが、その休むタイミングと長さがスコアを大きく左右します。その感覚を掴むには、1回ワークアウトをやってみるのが一番なのです。

後先考えずに全力で飛ばしてぶっ倒れる筆者。
こういう風になってはいけない

さらに人間、一度経験した物事には緊張感や恐怖感が減るものです。どんなにきついワークアウトであっても、1回やったことがあれば、自分がどんな状態になるかはわかります。すると自然に自分に合ったやり方が浮かび上がってきます。

「己を知り敵を知れば百戦危うからず」ってことですね。この場合の敵とはカストロ君やバーベルではなくって、ワークアウトの内容ってことですけど。

ワークアウトが発表される金曜朝から、スコア提出期限の火曜朝までの4日間。ボックスの営業時間やジャッジしてくれる人の都合など色々な制限があるでしょうけど、可能な限りワークアウトを試す機会を増やすべきです。ボックスオーナーの人には、この期間は出来るだけ多くその機会を作ってあげてほしい。それが何よりのメンバーへのサービスだと思います。

2019/02/09

クロスフィットと高齢化社会に関する一考察

クロスフィットの公式ホームページ(https://www.crossfit.com/ )が2019年度になってから大きく様変わりしました。それまでのアスリートのハードなトレーニングを中心とした内容から高齢者の医療や健康に関する分野へと大きくシフトしつつあります。

この路線変更に対しての反応は賛否様々ですが(感覚としては、私の周囲では「否」が「賛」を上回っている気がします)、私も高齢化社会とクロスフィットの関係について以前こんなエッセイを某所で書いていたことを思い出しました。よろしければご一読下さい。



スポーツジムと世代間の共生



クロスフィットという名のフィットネスジムでインストラクターの仕事に就いている。1クラスは1時間。人数は少ない時で1人、多い時は20人ぐらいになる。人数が少なくても多くても、あらかじめ決められたメニューをクラス全員で一斉に行うタイプのジムだ。

ジムには様々な年代の人がやってくる。クロスフィットはきついトレーニングで有名なので、20代、30代の若い世代が比較的多い。会員は平均して週に3,4回ぐらいの頻度で通ってくる。会員同士は何回か同じクラスで会っているうちに、互いに挨拶を交わす間柄になり、さらに親しい交流が始まることもある。

インストラクターとして最初の、そして最も大切な仕事は、やって来る会員1人1人の名前と顔を覚えて、全員に必ず1日1回は声をかけることだ。そうして会話を交わした会員が延べ何百人になるのか見当もつかない。だが、今でもよく覚えているのが76歳のある男性だ。仮にKさんとする。

76歳のKさんは勿論、ジムの中では飛びぬけて最年長だった。私の父が77歳なので、私にとってはちょうど自分の親の年代にあたる。もっと若い会員たちにとっては、Kさんはまさにおじいちゃんのような存在だっただろう。

Kさんは特に頑健でも健康なわけでもなく、年齢相応に体力が衰えていた。だからジムで行うトレーニング・メニューをそのままこなすことはとても出来なかった。そのためクラスの皆とは別のメニューを彼だけのために作成するのが常だった。

単純にインストラクターの仕事量で言えば、Kさんがクラスにいる時は彼がいない時よりはるかに手間がかかった。別メニューを作成するだけではなく、クラスが行われている間はずっとKさんが転んだり倒れたりしていないか常に注意を払っていたものだ。

普通、こういう人は健康のために運動をしようと思い立ったとしても、高齢者向けのクラブに入るか、1対1のパーソナル・トレーナーをつけることが多い。その方が教える方も教わる方も効率はいいだろう。

だが、Kさんにとっては、ジムの空間はトレーニングよりむしろ若い世代との交流が主な目的だったのではないかと思う。若い会員たちと談笑し、子供のような私の指示に真剣に耳を傾け(実際にKさんの長男は私より年上だった)、いつも楽しそうにジムにやってきた。

そうしているうちにトレーニング効果も少しづつではあるが現れてきた。以前はベンチに手をついて45度の角度でしか出来なかった腕立て伏せが補助なしで出来るようになり、膝を軽く曲げるハーフ・スクワットしか出来なかったのが、きちんとお尻を膝より低く下すフル・スクワットが出来るようになったのだ。

齢をとると誰でも筋力は衰える。同時に、適切なトレーニングを行えば、どんなに高齢であっても筋力を増やすことは可能である。加齢を止めることは出来ないが、それに伴う体力の低下を遅らせることも、向上させることさえ出来るのだ。私が学んだスポーツ生理学の教科書にはそう書いてある。常識とも言えるだろう。だが、理屈はそうでも、それを実際に行える高齢者は少ないし、私達がそれを目にする機会も多くはない。私はKさんを尊敬しているし、彼のインストラクターになれたことを幸運だったと思っている。

高齢化がますます進行する昨今、高齢者が運動する機会と場所を提供することは、これからの社会の大きな課題になっていくだろう。高齢者専用のトレーニング施設も増えるだろうし、高齢者を適切に指導できる専門のインストラクター育成も必要だ。

それと同時に、高齢者が高齢者だけのグループに固まるのではなく、あらゆる年齢層の人が集まって仲間になれる場所があっていいと思う。Kさんにとっての私達のジムががそうであったように。

トレーニングジムは単に体を鍛えるだけの場所ではなく、コミュニティとして機能できるものだと思っている。そして、そのコミュニティは排他的であってはいけないのだ。

Kさんはクラスを終えてジムから帰るとき、よく「コーチ、助けてくれてどうもありがとう」と私に言ってくれた。だけど助けていたのは私だけではない。Kさんもまたクラスの雰囲気を和らげ、インストラクターとして成長する機会を与えてくれることで、私を大いに助けてくれた。私とKさんは仲間であったし、他の会員もまた同じであったと思う。



福祉と呼ぶに値するかどうかはわからないが、私は私のジムを常にあらゆる世代のあらゆる人達に開かれた場所であり続けさせることが、私にできる社会への貢献だと思っている。


2019/01/30

本当はタバタじゃないタバタ第2弾



タバタってのは4分間やったらぶっ倒れてるまでやるんだぜえ、って書いた記事を書いたばかりなのですが、クロスフィットでよくやる「なんちゃってタバタ」もタバタじゃないけど効果はありますって記事も書きました。



「筋持久力アップに。タバタ式トレーニングを活用したおすすめ筋トレメニュー」

https://melos.media/training/37017/

2019-01-31 MELOS 掲載記事

クロスフィットは大人の部活、オープンは大人の運動会


クロスフィット・オープンは何しろオープンだから誰でも参加できます。
クロスフィットやっていなくても参加できます。
でも、それは大変だから、いっそのこと、この機会にクロスフィット入っちゃいましょう、って記事を書きました。

いつものことですが、ここに来る人には新しい内容はないよう。
でも、クロスフィットって何?って人がお知り合いにいたらシェアしてあげて下さい。



「やる」クロスフィット。資格不問!世界最大のフィットネス競技「オープン」に参加しよう。

https://sportie.com/2019/01/crossfit-open


2019/01/30 Sportie 掲載記事


4分間のHIITータバタにまつわるウソ・ホント




クロスフィットで最も有名な日本人は誰でしょう?
それはタバタさんです。
100人が100人中知ってます。日本人だとは知らないかもしれないけど。

20秒間の“強度の高い運動”と、10秒間の“休息”あるいは“負荷の軽い運動”を1ラウンドとして、それを8ラウンド繰り返す。
たったそれだけ。でも死ぬほどきつい。
よく誤解されてるように立命館教授の田畑泉氏が「発明」したのではなく、
もともとスピードスケートのナショナルチームが行っていたトレーニングの効果を田畑泉氏が「証明」したものです。

クロスフィットではよく「タバタ」と称したワークアウトをやりますけど、
中にはおいおいそれは違うだろってのも出てきます。
ただ20秒/10秒x8セットの時間を使っているだけで、タバタに向かない種目をやったり、ときには今日はタバタを3セット、なんて言っている輩もいます。

そんなんはタバタじゃねえや! って苦々しく思うこともしばしばあります。
なぜなら私はクロスフィット歴よりタバタ歴の方が長いのです。

そんな記事がMELOSに掲載されました。もちろんクロスフィットの悪口は書いていません。
是非ご一読ください。




2019/01/30  MELOS 掲載記事




2019/01/24

クロスフィット初心者や中級者はオープンまでの4週間で何をすべきか




2月21日のオープン開幕まで今日でちょうど4週間に迫りました。2012年度から連続フル出場を継続中の出場回数だけはベテラン、だけど結果は大したことない1コーチが送るオープン直前対策アドバイス、「クロスフィット初心者や中級者はオープンまでの4週間で何をすべきか」が今回のテーマです。上級者の方には当てはまりません。

ご存知の通り、オープンではありとあらゆる身体能力が試されます。パワーもスピードも持久力も全て必要です。ところが、これら基礎体力を残り4週間で大幅に底上げさせることは不可能です。それよりも現在持っている最大の力を競技当日に発揮するためのメンテナンスとピーキングが大きくスコアを左右します。これについては別の記事で詳しく触れます。

それではこれからの4週間、クロスフィット初心者や中級者が何を最優先すべきかと聞かれたら(誰も聞いてくれませんが)、私は「出来ない動作があったら、1回でもいいから出来るようにしておけ」とアドバイスします。

例を挙げるなら、オープンに毎回出てくるマッスルアップです。リングでもバーでも、マッスルアップが1回も出来ない人は実に多いです。ですからマッスルアップが出来ると出来ないとではヘタをすると1万人ぐらい順位が違ってきても不思議ではありません。ロウイングやバーピーが少しくらい速かったり遅かったりするのとはわけが違います。1回でいいから出来るようになっておくべきなのです。

もちろん、限界はあります。懸垂とディップが出来ない人が急にマッスルアップは無理でしょう。でもそれらが5回づつくらい出来る人なら、1か月真剣に練習したら、絶対にマッスルアップは出来るようになります。オープンで問われるのは回数だけですので、どんなに汚いフォームでもいいのです。1回は1回ですから。

同じことが2重跳び、T2B, C2B, HSPUなど、いわゆる体操系の種目に言えます。最低限の筋力さえあれば(クロスフィットを日常的にやってる人ならあるでしょう)、一定期間集中して練習すれば必ず出来るようになります。

こう断言できるのは、体操系と言っても、オープンで出てくる動作はそれほど難易度は高くないし、「一定期間集中して練習する」ということが、普段のクロスフィットから最も欠けている部分だからです。

Boxroxと言うサイトで「クロスフィット・オープンで毎年出てくる7つの動作」というタイトルの記事が掲載されました。

それによると過去のオープンで出てきた動作を多い順に並べると以下のようになります。
  • Double Unders – 8
  • Muscle Ups (bar or ring) –  8
  • Toes To Bar – 8
  • Thrusters – 8
  • Chest To Bar Pull Ups – 8
  • Wall Balls – 7
  • Snatch (Full / Power) – 7
  • Deadlifts – 7
  • Burpees (any kind) – 6
  • Box Jumps – 5
  • Cleans (Power/Full/DB) – 5
  • Calorie Row – 5
  • Overhead Squats – 4
  • HSPU – 4
  • Shoulder To Overhead – 3
  • Clean and Jerks – 2
  • Walking Lunges – 2
  • Dumbbell Snatches – 2

赤字にした動作が要注意です。1回も出来ないものがあれば、この4週間で集中して練習して出来るようになっておきましょう。ここには出てきませんが、昨年から逆立ち歩きもありました。


部分的ですが、以下の記事もご参考までに挙げておきます。

2019/01/22

クロスフィットの未来予想図 - さらなる国際化と競技偏重主義からの脱却


前回の記事でお伝えしました通り、2019年からクロスフィット・ゲームズは大きく変わろうとしています。その背景や狙いを私なりに考察してみました。前回の記事は客観的な事実を紹介したもの、今回の記事は全て私の主観です。



昨年秋からのクロスフィット本部が行った一連の改革案を見ていくと、2つのキーワードが浮かび上がってきます。「国際化」と「競技偏重主義からの脱却」です。

国際化については明らかです。各国から1人づつ代表選手がゲームズ本選に選ばれることで、参加する選手の国籍は格段に多くなります。クロスフィットの公認(Affiliate)ボックスが1つ以上ある、と言う条件を満たす国は160以上あると言われています。その全ての国から代表選手がゲームズ本選が行われるウィスコンシン州までやってくるとは到底思えませんが、昨年までのように出場する選手の殆どがアメリカ人という状態からは大きく様変わりすることは間違いありません。開会式や選手入場のセレモニーが行われるとしたら、我々はそこで数多くの国旗を目にすることになるでしょう。オリンピックのようにとまではいかなくても。

このことによって数多くの非米国人選手がチャンスを得ることになります。日本を例に取りますと、未だかってゲームズ本選の一般個人の部に出場した選手はいません。2018年オープンで日本1位だった男子選手は世界では765位、同じく女子の日本1位は世界では447位でした。日本1であっても、男女それぞれ20万人ぐらいの参加者から選ばれる世界でたった40人の「ゲームズ・ファイナリスト」という称号からははるかに遠い地点にいたのですが、2019年からは必ず誰かが日本を代表してゲームズ本選に臨むことになります。

チャンスを得るのは選手だけではありません。「ゲームズ・ファイナリスト」を擁するボックス、そのメンバー達や関係者全員がゲームズ本選を今まで以上に身近な存在として感じるようになるでしょう。ひいてはクロスフィットがさほど知名度を得ていない国(日本もその一つですが)にもクロスフィットが広がっていく一つのきっかけになると思われます。

もう一つのキーワード「競技偏重主義からの脱却」にはクロスフィットの創始者であるグラスマンCEOの意向が色濃く反映されています。

―「リージョナルを廃止して外部の公認イベントに委託するのはクロスフィット本部の貴重な人的資産を本来の目的のために活用するため」

―「クロスフィットが取り組むべき最大の課題は健康であって競技ではない」

グラスマンCEOは上記のような趣旨の発言を繰り返し、一連の改革案を推進してきました。その間、今までクロスフィットの成長を支えてきたメディア部門のほぼ全員を解雇するといった荒療治も行いました。

グラスマンCEOにはクロスフィットが競技主体になることに強い懸念があるようです。ゲームズは存続するとしても、年1回のお祭り的なイベントにするのが目的ではないでしょうか。

公式ホームページも2019年初頭から大きく内容を変え、一般の高齢者が自宅で日常動作を行う写真がアスリートやインストラクターに取って代わりました。ゲームズの大会ディレクターであるカストロ氏はそのまま組織に残っていますが、その存在感は薄れつつある印象を受けます。

クロスフィットは短期間のうちに巨大組織へと急成長しました。果たして、トップ1人の意向がどれほど組織全体の方向性に影響力を持ちうるのか、私本人は懐疑的です。彼にとっては原点回帰だとしても、多くのクロスフィッターにとってはあまりにも急激な変化だからです。今後の推移に注目していきたいと思います。