2019/01/22

クロスフィットの未来予想図 - さらなる国際化と競技偏重主義からの脱却


前回の記事でお伝えしました通り、2019年からクロスフィット・ゲームズは大きく変わろうとしています。その背景や狙いを私なりに考察してみました。前回の記事は客観的な事実を紹介したもの、今回の記事は全て私の主観です。



昨年秋からのクロスフィット本部が行った一連の改革案を見ていくと、2つのキーワードが浮かび上がってきます。「国際化」「競技偏重主義からの脱却」です。

国際化については明らかです。各国から1人づつ代表選手がゲームズ本選に選ばれることで、参加する選手の国籍は格段に多くなります。クロスフィットの公認(Affiliate)ボックスが1つ以上ある、と言う条件を満たす国は160以上あると言われています。その全ての国から代表選手がゲームズ本選が行われるウィスコンシン州までやってくるとは到底思えませんが、昨年までのように出場する選手の殆どがアメリカ人という状態からは大きく様変わりすることは間違いありません。開会式や選手入場のセレモニーが行われるとしたら、我々はそこで数多くの国旗を目にすることになるでしょう。オリンピックのようにとまではいかなくても。

このことによって数多くの非米国人選手がチャンスを得ることになります。日本を例に取りますと、未だかってゲームズ本選の一般個人の部に出場した選手はいません。2018年オープンで日本1位だった男子選手は世界では765位、同じく女子の日本1位は世界では447位でした。日本1であっても、男女それぞれ20万人ぐらいの参加者から選ばれる世界でたった40人の「ゲームズ・ファイナリスト」という称号からははるかに遠い地点にいたのですが、2019年からは必ず誰かが日本を代表してゲームズ本選に臨むことになります。

チャンスを得るのは選手だけではありません。「ゲームズ・ファイナリスト」を擁するボックス、そのメンバー達や関係者全員がゲームズ本選を今まで以上に身近な存在として感じるようになるでしょう。ひいてはクロスフィットがさほど知名度を得ていない国(日本もその一つですが)にもクロスフィットが広がっていく一つのきっかけになると思われます。

もう一つのキーワード「競技偏重主義からの脱却」にはクロスフィットの創始者であるグラスマンCEOの意向が色濃く反映されています。

―「リージョナルを廃止して外部の公認イベントに委託するのはクロスフィット本部の貴重な人的資産を本来の目的のために活用するため」

―「クロスフィットが取り組むべき最大の課題は健康であって競技ではない」

グラスマンCEOは上記のような趣旨の発言を繰り返し、一連の改革案を推進してきました。その間、今までクロスフィットの成長を支えてきたメディア部門のほぼ全員を解雇するといった荒療治も行いました。

グラスマンCEOにはクロスフィットが競技主体になることに強い懸念があるようです。ゲームズは存続するとしても、年1回のお祭り的なイベントにするのが目的ではないでしょうか。

公式ホームページも2019年初頭から大きく内容を変え、一般の高齢者が自宅で日常動作を行う写真がアスリートやインストラクターに取って代わりました。ゲームズの大会ディレクターであるカストロ氏はそのまま組織に残っていますが、その存在感は薄れつつある印象を受けます。

クロスフィットは短期間のうちに巨大組織へと急成長しました。果たして、トップ1人の意向がどれほど組織全体の方向性に影響力を持ちうるのか、私本人は懐疑的です。彼にとっては原点回帰だとしても、多くのクロスフィッターにとってはあまりにも急激な変化だからです。今後の推移に注目していきたいと思います。

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