2024/11/28

クロスフィット本部の発表に選手会が反発。クロスフィット・ゲームズのボイコットも容認

 













Brent Fikowskiがリーダーを務め、クロスフィットのトップ選手たちが集まったグループ、Professional Fitness Athletes’ Association (PFAA)が公式インスタグラムを更新し、先日のクロスフィット本部による発表を非難しました。



「死亡事故の調査結果が不透明であることに失望し、また改善案には満足しない」とあります。クロスフィット・ゲームズをボイコットするアスリートがあれば支持するとも述べています。


死亡事故が起きた直後、PFAAは以下の3つをクロスフィット本部に要求していました。


1)死亡事故に関する第三者機関の調査

2)安全対策委員会の設置

3)Dave Castroの追放


1)、2)に関しては不十分、3)は無視されたという認識なのでしょう。

さて、どうなるでしょうか。



2024/11/24

クレアチン摂取で期待できる筋肉増加はどれくらいか? 12の研究を統合解析したメタアナリシス

 













世の中には筋肉を増やすためのサプリメントは数えきれないほどありますが(どなたか数えてみてください)、そのなかでもっとも効果と安全性が科学的に証明されていて、ドーピング規制に抵触する恐れが少なくて、しかも簡単に手に入るものを探すとすれば、たぶんクレアチンはプロテインパウダーに次ぐのではないでしょうか。

では、クレアチンを摂取すると、実際にどれくらいの筋肉が増やせるの? という疑問を調べた論文(*1)が発表されました。1,700件近くのデータから12個の既存研究を選び、それらを統合解析したメタアナリシスです。

*1. The Effect of Creatine Supplementation on Resistance Training-Based Changes to Body Composition: A Systematic Review and Meta-analysis
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39074168/


50歳以下で日常的に筋トレをしている人、という条件下での平均値は以下の通りなのだそうです。

  • 筋肉量増加:1.1 kg
  • 脂肪量減少:0.7 kg


むろんあくまで平均値の話ですので、個人差はあります。クレアチンをたくさん摂取しても、筋トレが不足していたら筋肉は増えません。クレアチンを摂らなくたって、筋トレをすれば筋肉は増えます。

どこまでがクレアチンのおかげで、どこからが筋トレの効果なのか。その線を引くことは不可能か非常に困難なのだろうと想像できます。

それでも、もしクレアチンを摂取していて、上の数字を極端に上回っていたり、あるいは下回っているのであれば、一度立ち止まって、筋トレと栄養摂取のやり方を見直した方がよいかもしれません。



2024/11/20

クロスフィット本部が改訂した安全対策ルール及び手順を発表

 













Lazar Đukić選手の死亡事故に関する第3者調査が完了し、来年以降のクロスフィット・ゲームズに向けて安全対策ルール及び手順を改訂したとクロスフィット本部が発表しました。


クロスフィット・ゲームズ公式ウェブサイトの発表(英語):
Moving Forward Together – Safety and Procedural Changes Following the 2024 CrossFit Games


もっとも、調査の内容はプライバシー保護のために非公開とするとのことで、事故原因の真相や責任の所在が明らかになったわけではありません。

事故から3か月以上が経っていることを考えると、これだけの時間をかけた理由がいまひとつ私には分かりませんが、以下がその要旨です。

1.安全担当リーダー職の創設

安全対策を一元管理し、その責任を負うリーダーを置くということです。この役職は外部から新たに人材を採用し、代表者のデイブ・カストロとクロスフィット・CEOの下に直結するとあります。

つまり、カストロ君もフォール氏も現職に留まり、事故の責任は負わないらしいです。

2.安全対策委員会の設置

医療や安全の専門家やアスリートで構成する独立した安全対策委員会を設置する、この委員会は大会前と大会中にリスク評価や安全性に関する助言を行うとあります。

3. オープンウォーター環境での競技は中止

今後は海や湖などでの競技は行われないとのことです。プールではあり得ます。

4. 大会前のリハーサルを実施

すべての大会スタッフを集めて、安全手順の確認を目的としたリハーサルを行うとあります。アスリートたちの事前ミーティングでも安全手順の説明を行うということです。

これなどは競技の内容を伏せていてはできませんので、今後はイベント発表の時期が早まるかもしれませんね。

5. メンタルヘルス専門家によるサポートを増やす

6. アスリートたちの互選による選手委員会を設立する



2024/11/14

遅筋と速筋の比率を知る方法 ー 新研究の紹介

 













筋肉を構成する筋繊維は「遅筋(赤筋)」と「速筋(白筋)」のタイプに大別されます。そして人は誰でも遅筋繊維と速筋繊維の両方を持っています。しかし、どちらがより多いかという組成比率は先天的に決まっています。

簡単に言えば、遅筋繊維の割合が大きい人は長距離走に向いていますし、速筋繊維の割合が大きい人には短距離走が向いています。マラソンランナーと100m走スプリンターの体格を比較すれば明らかです。

遅筋と速筋のどちらを多く持っているかは生まれつきであり、それは変えることはできないということが長い間の定説でした。しかし、2018年に発表された研究(*1)はその定説を否定しました。

*1. Muscle health and performance in monozygotic twins with 30 years of discordant exercise habits
https://www.researchgate.net/publication/326398362_Muscle_health_and_performance_in_monozygotic_twins_with_30_years_of_discordant_exercise_habits

30年間という長期間に渡って、異なる生活習慣を送ってきた一卵性双生児を調べたところ、同一だったはずの筋繊維組成が異なっていることを発見したのです。

研究対象になった双子の1人は長距離走やトライアスロンなどの耐久系スポーツを行っていて、もう1人はほとんど運動の習慣がありませんでした。この2人の筋繊維組成を調べてみたところ、耐久系アスリートは遅筋繊維がそのほとんどを占めていたのに対し、運動の習慣がない方は遅筋繊維と速筋繊維の比率がほほ半分半分だったということです。

つまり、トレーニングによって遅筋と速筋の比率を変化させることは可能だと明らかになったのです。

しかし、遅筋と速筋の先天的な比率傾向は厳然として存在します。いわばスポーツの種類に応じた適性です。どちらかを意図的に伸ばすことはできても、それには長い年月がかかります。

現在の自分が遅筋優位タイプなのかそれとも速筋優位タイプなのかを知りたい人は、厳密には生体組織検査を受けるしかありません。筋肉を切り取り、医学的に分析してもらうわけです。想像するだけで痛そうです。

そんな大げさなことはしたくないという人は多いでしょう。医学的なアプローチとは別に、誰でも簡単に筋繊維比率を「推測」する方法には以下のものがあります。

  1. 垂直跳びの記録が男性は50cm以上、女性は35cm以上なら、その人は速筋優位
  2. 1-rep max の80%でバックスクワットを限界まで行い、8回以下なら速筋優位、11回以上なら遅筋優位

2の方法は私のでっちあげではなく、2023年に発表された研究(*2)に基づいています。

*2. Can muscle typology explain the inter-individual variability in resistance training adaptations?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37038845/#full-view-affiliation-1

速筋優位タイプは1回挙げるだけの最大重量(1-rep max)は遅筋優位タイプよりやや優位なのですが、その80%の重量で10回3セットやれと言われるとできないらしいのです。

簡単な判別方法なので、試してみてはいかがでしょうか。





2024/11/09

52歳が筋トレしても、22歳が筋トレしても、筋肉が受けるダメージは同じ ー 新研究の紹介

 













国際スポーツ医学ジャーナルに発表された研究(*1)によると、トシをとると筋肉のダメージが大きくなるとか、回復に時間がかかるとか、だから筋トレの強度と頻度は控えめにしましょうって話はウソだったらしいです。

*1. Acute Inflammatory Response to Eccentric Exercise in Young and Master Resistance-trained Athletes
https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/abstract/10.1055/a-2348-0238

研究では平均年齢22歳の若者グループ8人と平均年齢52歳のおっさんグループ8人に分けて、それぞれのグループからスクワットの記録が似通った者同士をマッチングしました。
そして、1-rep maxの70%でスクワットを10回行ってもらい、筋肉のダメージ、炎症、そして回復の変化を筋トレ直後から72時間後になるまで追跡しました。

筋トレ後のダメージはどちらのグループも同程度でした。同じような炎症が起き、24時間後からは同じように回復していきました。

22歳でも52歳でも、筋トレしたら筋肉痛になるのは当たり前。同じように筋繊維は破壊されるし、若ければ早く治るわけではないし、トシをとると治りにくくなるわけでもないそうです。

俺もトシだから、もう若いときのようにムチャな筋トレはできないよ。そんなことを口走ったことがある人は反省しないといけないようです。もし以前より回復が遅くなったと感じているとしたら、それは単にトレーニング不足なのかもしれません。自戒を込めて。




2024/11/04

ぶっ倒れるまでの筋トレはパフォーマンス向上には適さない。見た目には良い。ー新研究の紹介

 













ワークアウトの後でジムの床にぶっ倒れたことってありますよね? ベンチプレスでバーベルが胸から挙がらなくなって、助けてくれ~って叫んだことがありますよね?

でもこれって、パフォーマンスを上げる効果はあまりないらしいです。より正確に言えば、挙がらなくなる限界まで筋トレを行う方法はとくに筋力を増加させない、ただし筋肥大効果はあるって結論を述べた研究(*1)が発表されました。

*1. Exploring the Dose–Response Relationship Between Estimated Resistance Training Proximity to Failure, Strength Gain, and Muscle Hypertrophy: A Series of Meta-Regressions
https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-024-02069-2


フロリダ・アトランティック大学の研究者を中心とした論文著者グループは筋トレに関する既存の研究を統合分析し、運動中に運動者がどの程度筋肉の限界に近づいたか、またそれが結果にどのような影響を与えたかを調査しました。

その結果、筋力をつける目的に関しては、筋肉が完全に限界に達するまで自分を追い込むか、あと数回の反復回数を残してセットを終えるかは、大きな違いを生まないことが分かりました。しかし、筋肉の成長に関しては、限界に近いトレーニングの方が有利であるようです。

筋トレを行う理由は人によって様々です。ボディビルダーのように身体をデカくしたい人はぶっ倒れるまでやった方がいいようです。スポーツのパフォーマンスを高めたい人は、あと数回はできるなってくらいで留めておいた方が良さそうです。逆のように聞こえるかもしれませんが。




2024/11/02

エキセントリック動作はストレッチより筋肉の張りを減らす ー 新研究の紹介

 













あらためて述べるまでもないことですが、筋トレをすると筋肉が張ります。可動域は狭くなりますし、痛みを伴うこともあります。同じ部位の筋肉に続けて負荷をかけることは避け、筋トレ間に適度に休息日を設けることが望ましいのはそのためです。

休息日にまったく動かないか(完全休養)、あるいは軽い運動やストレッチを行うか(積極的休養)かはその人次第です。

ところが、エキセントリックのみの筋トレ動作にはハムストリングス筋肉の張りを減らす効果があることを、同志社大学の研究者らが発表しました(*1)。


*1. Can Eccentric-only Resistance Training Decrease Passive Muscle Stiffness while Increasing Size and Strength of Hamstrings?
https://journals.lww.com/acsm-msse/abstract/9900/can_eccentric_only_resistance_training_decrease.577.aspx


エキセントリックとは筋肉を伸ばしながら力を発揮する「伸張性筋収縮」のこと。俗に言う「ネガティブ動作」です。バーベルを上に持ち上げるのはコンセントリック、下に下げる部分がエキセントリックです。

この研究で採用されたのはStiff Leg Deadliftと呼ばれる種目です。 膝を少しだけ曲げたままで行うデッドリフトのことですが、研究ではとくにバーベルを下げる動作のみを行いました。

被験者に選ばれた36人の健康な男性たちは、その動作を10回3セット行うセッションを週2回もしくは週3回課せられるグループに分けられました。期間は10週間で、挙上重量は体重の60%,70%,80%と徐々に増やされました。

10週間後、両グループともハムストリングスの筋肉サイズと筋肉は増え(当然ですが)、週3回グループは筋肉の張りが大幅に減少しました。つまり、筋トレをより多く行った方が、筋肉の張りが減ったというわけです。

どうやら筋トレ後の回復方法はストレッチに限らなくてもよいようです。なにか、二日酔いには迎え酒が効くって言われている気がしなくもありませんが。


2024/10/31

あと5㎏がどうしても挙がらない、ときに有効かもしれないイメージ・トレーニングとその方法

 













筋トレの自己記録を突破するのは嬉しいものですが、永遠に成長を続けることはできません。どれだけ頑張っても、見えない壁というか、天井というか、とにかく記録が頭打ちになる時期は必ずやってきます。

そんなときには自己記録の110%を挙げている姿を繰り返し思い浮かべるイメージトレーニングが効くよ、とおススメしている研究(*1)があります。

*1. Positive Visualization and Its Effects on Strength Training 
https://assets.pubpub.org/k9og4slt/31643844339559.pdf


米国ケンタッキー州にある私立大学、トランシルバニア大学の研究者たちは同大の野球、ソフトボール、バスケットボール、サッカー、ラクロスなどのスポーツチームに所属する男女133人に3週間の筋力トレーニング実験に参加してもらいました。

参加者はまず、デッドリフト、ベンチプレス、クリーン、そしてスクワットといった種目の1-rep max(最大挙上重量)を測定され、その後に2つのグループに分けられました。

1つのグループは毎日5分間以上の後述する方法によるイメージトレーニングが課せられ、別のグループにはその指示はありませんでした。

3週間後、イメージトレーニングをしたグループは挙上重量が4.5kg~6.8kg増えたのに対し、それを行わなかったグループは平均2.2kgしか増えなかったということです。

なお、「イメージトレーニング」とは私の訳語で、原文では"Visualization"と表現しています。

具体的には以下の方法です。

  • 最大挙上重量の110%を挙げることに成功した姿を思い浮かべる。例えば、現実にベンチプレスを100㎏挙げられるとしたら、110㎏を挙げていることをイメージするわけです。
  • 毎日最低1回、5分間以上、元気の出る音楽を聴きながらイメージする。
  • 毎日決まった時間に外部からの干渉を受けない環境で行う。
  • 寝転んで、目を瞑ることが望ましい。


人によって上記の条件を満たす時間と場所は様々でしょうが、例えば私なら毎晩9時にはベッドに入りますので、そのときにヘッドセットでロッキーのテーマを聴きながら、今までどうしても挙がらなかった重量のバーベルを持ち挙げている、かっこいい自分の姿を思い浮かべたらよいみたいです。それだけで自己記録を更新できるらしいです。

今夜からでもやってみようかと思いますが、最大の難関はこれを3週間続けなくてはいけない、ということでしょう。継続はやはりチカラみたいです。




2024/10/30

筋トレ前に糖分が含まれた飲料でうがいをするとパワーが増す ー新研究の紹介

 













炭水化物や糖分がダイエットの大敵のように言われるようになってからも、大きなパワーを発揮するためには必要な栄養素であることは筋トレの常識です。

でも、だからと言って、米をどんぶり一杯食べたり、あるいはスポーツドリンクを牛飲する必要はないみたいです。

実際に飲み食いしなくても、糖分が含まれた飲料で「うがい」をするだけで筋肉のパワーが上がる。そんな研究結果(*1)が発表されました。

*1. Carbohydrate Mouth Rinses before Exercise Improve Performance of Romanian Deadlift Exercise: A Randomized Crossover Study
https://www.mdpi.com/2072-6643/16/8/1248


研究では20人の健康な若い男性(平均年齢22歳)を2つのグループに分け、あるグループには糖分6%が含まれた飲み物を、別のグループにはミネラルウォーター(プラセボ)を与えました。それらを使ってうがいをした後に、1セット6回が限界のルーマニアン・デッドリフトを5セット行ってもらいました。その数値を分析したところ、甘い飲料でうがいをしたグループの方に顕著なパワー数値向上が認められたとのことです。

ルーマニアン・デッドリフトはバーを上げるとき(コンセントリック)も下げるとき(エキセントリック)も大きなパワーを求められる種目です。1セット6回を5セットは高重量低回数に分類される、瞬間的なパワーを目指すための設定です。セット間の休息は3分間だったそうです。

パワー増加はコンセントリック局面とエキセントリック局面の両方で認められたとのこと。


僕は甘いものが好きではないので、コーラもスポーツドリンクも飲みません。コーヒーもブラックです。でも飲まなくてもいいなら、口をゆすぐことくらいはできると思います。体重増加を気にする人にも朗報かもしれません。

もっとも、スポーツドリンクにしろ、ミネラルウォーターにしろ、おカネを出して買った飲み物でうがいをすることに心理的な抵抗感はないか、という問題は別にあるような気もします。




2024/10/29

オリンピック選手には喘息患者が多い。ショッキングな研究結果とある難問


 











スポーツは健康に良い。ならばスポーツ選手は一般人より健康的なはず。漠然とそう考える人は多いかもしれません。

ところが、そのスポーツ選手の中でもトップレベルの集団であるオリンピック選手たちは慢性疾患に罹る比率が一般人より高い。そんなショッキングな事実を報告した研究(*1)があります。

*1. Asthma and exercise-induced bronchoconstriction in athletes: Diagnosis, treatment, and anti-doping challenges
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/sms.14358

その慢性疾患とは喘息(ぜんそく、英語: asthma)です。

上の研究によると、オリンピック選手たちの15~30%が喘息を患っているのだそうです。この数字は全スポーツの平均であり、スポーツによってバラつきがあるとのこと。

喘息に苦しむ選手が多いのは耐久系スポーツに分類される、長距離走、トライアスロン、水泳、そして冬季オリンピックではクロスカントリースキーやバイアスロンなどの種目です。

喘息の原因になるのは大気汚染や食習慣だと考えられてきましたが、どうやら長時間の有酸素運動によって引き起こされるケースもあるようです。彼らは筋肉だけでなく、心肺臓器も酷使しているのでしょう。

喘息に罹ると呼吸困難になることや、肺に長期的なダメージを与える可能性もあります。治療せずに放置することは大変に危険なのですが、アスリート、とくにオリンピック選手たちにとっては別の重大な問題があります。

それは喘息の治療に利用できる薬品の多くは、アンチ・ドーピング規則に抵触することです。

その結果、喘息の症状に悩みながらも、有効な治療の手段を取れない選手も多いと、論文著者たちは警鐘を鳴らしています。




2024/10/19

定年退職前後の高重量筋トレはその後の何年も効果が持続する ー新研究の紹介

 













いくら鍛えても、筋肉は使わないとすぐに衰える。世は諸行無常であり、驕れる人も久しからず。だから「貯筋」なんてできない。

それが今までの僕の信念でした。でも、必ずしもそうとは言えないよ、って研究(*1)が発表されました。退職間際の人が「重い」重量で筋トレをすると、脚の筋肉はその後の長期間に渡って丈夫でいられるのだそうです。


*1. Heavy resistance training at retirement age induces 4-year lasting beneficial effects in muscle strength: a long-term follow-up of an RCT.
https://bmjopensem.bmj.com/content/10/2/e001899


デンマーク・コペンハーゲン大学の研究者らは451人の退職間際の男女を以下の3グループに分け、1年間の活動を指定しました。

A) 週3回、高重量の筋トレ

B) 週3回、自重やバンドなどを用いた全身サーキット・トレーニング

C) 日常生活以外に運動の指定なし


なんとなく、高齢者に向いているのはB)のような気がしますが、2~4年後の追跡調査によると、脚の健康をもっとも高レベルで保っていたのはA)でした。

A) グループが行っていた筋トレとは1-rep Max の70~85%を6~12回を1セットとして3セット行うというものでした。実際にやってみると分かりますが、これはけっこう大変です。筋トレにも色々ありますが、パワー系と呼んでもいいセッティングです。

高齢者は怪我のないように、無理のない重量と回数で行いましょう。そんな筋トレ専門家のアドバイスを嘲笑うかのようです。週3回という頻度を1年間継続するというのもなかなかハードルが高いと言えるでしょう。

定年間近にそこまでやると、健康的なリタイア生活を長く楽しめる可能性が高くなるらしいです。試してみる価値はありそうです。

ちなみに、上の研究対象者の調査終了時の平均年齢は71歳、61%は女性だったということです。


2024/10/18

酒を飲むなら、その前に走れ。効果的な二日酔い対策とは日常の運動習慣である。 ー新研究の紹介

 













二日酔いによく効く飲み物や食べ物はよく話のタネになりますね。熱いシャワーを浴びるとか、水をがぶ飲みするとか、アルコールを体から追い出すための方法もよく語られます。

二日酔いにならないベストの方法はもちろん酒を飲まないことですが、それができれば苦労しないし、そもそもそんなことはしたくない。そんな人も多いでしょう。

最近、ある依存症関連の学術ジャーナルに発表された研究(*1)によると、日常的な運動習慣が二日酔いの症状を和らげるカギだということです。


*1.Physical activity as a moderator of the association between alcohol consumption and hangovers
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39216177/#full-view-affiliation-1


ヒューストン大学の心理学者らを中心とした研究チームは1,676人の大学生たちを対象に聞き取り調査をしました。抽出条件は一度でも二日酔いを経験したことがある、そして最低週に30分以上の運動をする習慣があることです。多分、条件に合致する学生を選ぶのは難しくなかったでしょう。

学生たちの飲酒パターン、二日酔いになる頻度と症状、それに運動の量と強度を分析した結果、二日酔いの症状と運動には強い関連があることが分かりました。

当たり前のことですが、飲酒量が多いほど、二日酔いをより頻繁に経験し、またその症状もひどくなります。しかし、ランニングなどの強度の強い運動をする習慣があればあるほど、二日酔いの症状が軽減されることが明らかになりました。

理由は様々に考えられます。

  • 運動はエンドルフィンの分泌を促す。エンドルフィンには痛みを和らげる効果がある。
  • 運動は睡眠の質を向上させる。睡眠は回復を促す。
  • 運動は体内代謝を良くする。それはアルコールの分解にも役立つ。
  • 運動は体内の炎症を抑える。炎症が抑えられると不快感が減る。

そのどれかが正しいのか、あるいはすべて正しいのかは私には分かりません。

しかし、この論文を素直に読めば、以下の結論を導くことができます。

スポーツマンでも酒を飲みすぎたら二日酔いにはなる。しかし、運動しない人に比べるとその症状は軽くなる

少なくとも私にとっては、きわめて都合の良い結論です。




2024/10/16

クロスフィットはHyroxを取り入れるべきか

 


"Lauren at EU Championships 2023 Wall Balls" by HybridFitty is licensed under CC BY 4.0.










クロスフィットのボックスにHyrox用のクラスを設けるところが増えてきました。

何それ? という人は下の記事をご覧ください。

関連記事:欧米で人気急上昇中。Hyrox とDeka Fitは「次のクロスフィット」か


長い話を私なりに短くすると、「クロスフィットでよくやるワークアウトのうち、技術的に簡単で根性頼みの種目に中距離走を挟んだ耐久系競技」です。具体的にはロウイングとかスレッド・プッシュとかバービージャンプとかのことです。それらを決まった順番で行います。

「次のクロスフィット」みたいに呼ばれて、人気が高まっているのですが、クロスフィットの方も無視できない勢いがあります。と言うか、はっきりと人気が逆転しているような気がしないでもありません。

それならむしろ、Hyroxをクロスフィットに取り組んでしまえ、と主張している人の話を、クロスフィット専門のようなウェブサイト『BarBend』が掲載しました。

関連記事:CrossFit Meets HYROX, Part 1 — John Singleton and the Progrm on How to Integrate HYROX in CrossFit Gyms


クロスフィット・ゲームズのコーチを長年務め、最近Hyroxのトレーニングプログラム責任者になったという、John Singleton氏です。

この記事は3本連載の1本目ということで、具体的な方法より、なぜクロスフィットがHyroxを取り入れるべきかという概論を述べています。

また、長い話を私なりに短くしますと、氏の主張は以下のようなものです。

「クロスフィットのボックスにはHyroxで必要とする器具が一通り揃っている。それを利用しない手はない。オリンピック・リフティングやジムナスティックな種目は難し過ぎると敬遠するメンバーも多い。そんな人たちのニーズに応えられる。Hyroxはクロスフィットと伝統的な耐久系スポーツのギャップを埋めることができる」


もっともな話だとは思います。最少の投資で最大の成果があるかもしれません。

constantly varied functional movements, executed at a high intensity(常に変化する機能的な種目を強い強度で行う)ってクロスフィットの理念はどうなったんじゃい、おうこらおうと言いたくもなりますが、ボックスを経営する人には別の見方もあるのでしょうね。








休まず歩き続けるより、ちょこちょこ立ち止まった方が痩せる ー 新研究の紹介

 













ウォーキングは痩せる。長時間の有酸素運動は脂肪を燃焼するのに最適だから。

きっと本当です。でもありがちな誤解があるよと、そんな耳寄りな情報を、英国の王立学会出版(Royal Society Publishing)に掲載された論文(*1)が知らせてくれています。

*1. Move less, spend more: the metabolic demands of short walking bouts
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2024.1220


同じ距離を歩くなら、休みを挟まずに歩き続けるより、何回も立ち止まる方が、身体はエネルギーを多く消費する。つまり効率的に痩せるってことです。

トレッドミルとステアマスターを使った実験では、止まった状態から歩き始めた段階のエネルギー消費量は、歩き始めてからしばらく経った段階でのそれより、20-60%程度の範囲で多くなったそうです。

逆に言えば、歩き続けることで人は体内エネルギーを効率的に消費するようになるというわけで、そしてそれはある意味では望ましい成果ではあるのですが、痩せるという目的には合わないようです。

クルマに置き換えるとよく分かります。高速道路をスイスイ走るときより、混雑した街中でストップ&ゴーを繰り返すときの方が燃費は悪くなります。クルマがたくさんガソリンを燃焼するように、人は体内のエネルギー源、その多くは脂肪をより多く燃焼するのです。

痩せるためにトレッドミルを歩いたり走ったりするよりも、そのジムに歩いて行く方がずっと効率が良いってことですね。

信号待ちがない公園を探してウォーキングするより、通勤や通学で街中を歩く方がずっと痩せるってことでもあります。

ブルース・リーは半世紀も前にこんな言葉を残しています。つくづく偉大な人でしたね。

「なるべく歩くようにしなさい。たとえば、目的地から数ブロック離れた場所に駐車するように。エレベーターを使わずに、階段を上りなさい」





2024/10/08

筋トレの前にSNSをチェックするとパフォーマンスが落ちる ー 新研究の紹介

 













スマホの持ち込みを禁止するジムがあります。目の前でスマホをいじられると、ラックやマシーンの順番待ちをしている人は確実に苛立ちますので、メンバー間のトラブルを回避するためではないかと思われます。

やってる本人にしても、セット間にスマホを気にしているようでは、いかにも集中力が削がれそうな気がします。

それだけではなく、スマホで見るモノについても注意が必要なようです。SNSのように反応があるコミュニケーションツールは、ドキュメンタリー動画のような受信型より、筋トレのパフォーマンスにより大きな悪影響を与えるとした研究(*1)が発表されました。


*1. Mental Fatigue From Smartphone Use Reduces Volume-Load in Resistance Training: A Randomized, Single-Blinded Cross-Over Study.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34000894/


実験:

被験者たちを2グループに分け、あるグループは筋トレの前にドキュメンタリー動画を視聴、別のグループは同じ時間だけSNSを見るように指示された。

両グループとも15RMの80%でスクワットを限界まで行うエクササイズを3セット行った。セット間の休息は3分間。

結果:

SNSグループは平均して15%ほど挙上回数が減り、また精神的な疲労度が高くなった。運動の強度やモチベーション、さらには血中乳酸濃度といった要素にはグループ間で大差はなかった。


研究者たちは上の結果を踏まえて、パフォーマンスの差異は身体的なものではなく、心理的要因によるものだと結論で述べています。


なかにはSNSで筋トレのモチベーションを上げる人もいるかもしれませんが、筋トレの30分くらい前にはスマホを閉じる方がより賢明なようです。

2024/10/02

デッドリフト500㎏!ストロングマン・コンテスト王者の身体は一般人とどう異なるか、の研究

 










ストロングマン・コンテストという競技を知っていますか?

巨大なタイヤをひっくり返したり、トラックを引っ張ったり、ドラム缶を投げたりする力比べです。巨大な人たちが集まって、信じられないようなパワーを披露してくれます。


参照記事:人間の極限パワーに挑む「ストロングマン・コンテスト」


そのストロングマン・コンテスト世界大会で優勝歴があり、デッドリフト世界記録(500㎏!)も樹立したことがあるエディ・ホール選手の肉体が一般人とどのように異なるかを解剖学的に調べた研究(*1)が発表されました。

*1. Muscle and tendon morphology of a world strongman and deadlift champion


そんなの筋肉量がめちゃくちゃ多いに決まってるでしょ、と思うかもしれません。まさにその通りで、ホール選手の全身筋肉量は一般人の2倍以上あるということです。そこら辺は、わざわざ調べなくても、見たら分かりますよね。

しかし、それだけではありません。その筋肉がどこについているか、どの種類の筋肉が多いか、靱帯や腱との比率は、と掘り下げて分析していくと、興味深い事実が浮き彫りになりました。
  • ホール選手の下半身を安定させる小さな筋肉群(スタビライザー)は一般人の2.5倍から3倍くらいある。大きな筋肉を鍛えるだけでは、重いモノを持ち上げて、それを保持することはできない。
  • ール選手の大腿四頭筋は一般人の2倍あるのに対し、この筋肉につながる腱は30%しか大きくない。これは筋肉の成長が腱の成長を上回っていることを示唆しており、腱損傷のリスクが高まる可能性がある。

尋常ではないパワーは巨大な筋肉によって発揮されますが、外目に見えない部分も大切なようです。ただし、筋肉は鍛えられても、それを支える腱を鍛えることは難しいようです。

よく筋トレは故障予防のためにも提唱されますが、筋力を鍛えることは必ずしも故障リスクを減らすとは限りません。かつてプロゴルファーのジョン・デーリー選手がこんな発言をしました。

「筋肉は攣ることがあるけど、脂肪は攣らないよ」

2024/09/29

フィットネス系インフルエンサーのファンは運動習慣が多い、でも不安感も大きくなる。新研究の紹介

 













フィットネス系インフルエンサーをフォローする人たちは運動量が多くなる。しかし、メンタルヘルスに問題を抱えやすくなる。そんな研究結果(*1)がサイバー心理学ジャーナルに発表されました。

*1. Healthier but not happier? The lifestyle habits of health influencer followers
https://cyberpsychology.eu/article/view/21597


研究によると、フィットネス系インフルエンサーをフォローする人たちはそうでない人たちと比較して、まず「激しい運動」を行う率が高くなります。さらに野菜や果物の摂取量も多くなるそうです。ここまでは良い側面です。

しかし、メンタルヘルスに目を向けると、フォロワーたちは摂食障害やうつなどの問題を抱える確率がより高くなるのだそうです。

健康的なライフスタイルとやり過ぎの弊害は紙一重なのでしょうね。

運動にしても、栄養にしても、インターネットからの情報はほどほどに見ておけばよいのでしょうが、若い人は感受性が高いので、どうしても影響が大きくなってしまうのかもしれません。

研究対象となったのは、アメリカ、イギリス、そしてニュージーランドの英語圏3か国に住む、年齢18歳から35歳までの若い世代1,022人だそうです。従って、日本の若者や非若者とは事情が異なるかもしれません。でもきっと、共通点はあるのじゃないかと個人的には感じます。



2024/09/28

マッスルメモリーってホントにあるの? 新研究の紹介

 













マッスルメモリーって言葉があります。筋肉を鍛えると、長期間休んでも筋肉の細胞や神経系が過去の状態を「記憶」していて、再開後は以前のレベルに戻りやすくなるという話です。

つまり、筋トレは休む時期があっても構わないってことで、色々な事情でジム通いが続けられない人にとっては都合の良い理論です。

そのマッスルメモリーって現象は実在するのか?について調べた研究(*1)が発表されました。

*1. Muscle memory in humans: evidence for myonuclear permanence and long-term transcriptional regulation after strength training.
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1113/JP285675?ck_subscriber_id=2049311529


研究の概要は以下の通りです。

方法:

  • 被験者は12人の筋トレ未経験者
  • 最初のトレーニング期間:片腕だけのダンベル・アームカールを10週間
  • 休息期間:16週間
  • 再トレーニング期間:両腕のダンベル・アームカールを10週間

結果:

最初のトレーニング期間で鍛えた腕の筋肉サイズは増えた(当たり前ですね)。休息期間を終わると、筋肉サイズは元に戻った(これも当たり前)。しかし、再トレーニング期間を経ると、過去に鍛えた腕は筋肉サイズがすぐに以前のレベルに戻り、最終的な向上率も別の腕より高かった。


筋トレを休んで、筋肉が萎んじゃったなーってお嘆きの人も、実は努力の結果はなくなってしまったわけではなく、ただ隠れているだけのようです。

「トレーニングを休んだら、取り戻すまでにその倍の時間がかかるんだ」なんて熱く語ってきた指導者には気の毒なのですが、どうやらそれは大ウソだったらしいのです。筋トレに関しては、って話ですけど。技術面やメンタル面はまた違うかもしれません。

何はともあれ、長いことバーベルもダンベルも挙げてないやって人は、もういちど筋トレを再開してみてはいかがでしょうか。




2024/09/26

筋トレするとボケない ー ハーバード医学大学も注目の研究

 













筋トレは脳にも良い影響を与える。物忘れが多くなったり、判断力が弱ってきた人は、筋トレをすると、脳の機能が向上する。

私が言っても説得力はないでしょうけど、そんな研究結果を報告した学術論文は実に多いのです。

そのうちのひとつ、オーストラリアの研究者たちによる下の研究(*1)は、かのハーバード医学大学のニュースレターにも紹介されました。念のためにお断りしておくと、私はその著者グループには参加していません。

*1. Mediation of Cognitive Function Improvements by Strength Gains After Resistance Training in Older Adults with Mild Cognitive Impairment: Outcomes of the Study of Mental and Resistance Training.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28304092/#full-view-affiliation-1


研究の被験者は軽度の認知障害を持つ 55 歳から 86 歳の女性 68 人と男性 32 人。ランダムに 2つのグループに分けられ、1 つのグループは 6 か月間、週 2 回、最大重量の 80% くらいの筋トレを行いました。もう 1つのグループは同期間ストレッチだけを行いました。

被験者たちは、研究の開始時と終了時、および研究終了から 12 か月後に認知テストを受けました。すると、筋トレグループは、研究終了時に開始時よりも大幅に高いスコアを獲得し、12 か月後もそのスコアを維持しました。ストレッチだけグループのスコアは若干低下しました。

さらに興味深いことは、筋力向上率と認知テストのスコア向上率は比例したとのこと。
つまり、筋トレをやればやるほど、アタマはすっきりするらしいのです。

重ねて念を押しますが、これは私の個人的経験ではありません。

きっと例外もあるはずです。いくら筋トレをやっても、物忘れがますますひどくなる人もいるでしょう。それも私ではありません。









2024/09/25

クロスフィット創始者グレッグ・グラスマンが新団体MetFixを創立

 







コロナウイルスや黒人差別に関する失言のオンパレードで自ら創設したクロスフィット組織を追われたグレッグ・グラスマンですが、その後も精力的に活動を行っています。

政府、医学界、ジャーナリズムは経済的利益を優先させ、誤った情報を操作して、人々の健康を脅かしている。クロスフィット時代からグラスマンは一貫してそう主張してきました。

彼が新たに設立したMetFixの公式ウェブサイトを見る限り、現段階では具体的に何をする団体なのかはイマイチ不明瞭です。

どうやら、パーソナル・トレーナーの教育を通じて、グラスマンの方法論を広めようとしているみたいです。


MetFixは「クロスフィットを作り上げたすべての経験を活かし、それをさらに進化させて、多くの人々を殺し、多くの国家を崩壊させている病気の蔓延と戦う」と宣言しています。


キャッチフレーズは"The Evolution of the Revolution"。「革命の進化」と訳すべきでしょうか。英語では見事に韻を踏んでいます。「クロスフィット」もそうですが、この人は優れたコピーライターの才能があると思います。

上の公式ウェブサイトに会員登録用のフォームがあります。


2024/09/24

カストロは競技より安全管理を優先させていた? クロスフィット・ゲームズ創世記のころの発言が脚光

 









クロスフィット・ゲームズの競技ディレクター、デイブ・カストロはすっかりワルモノになってしまっています。アスリート団体からは退陣を要求されています。

死亡事故が起きたにもかかわらず競技を翌日から再開させたこと。そのことを遺族にむりやり承知させたこと。そもそも救助体制がお粗末だったこと。そんな一連の対応が非難されているのです。

カストロは2007年の第1回大会から大会の運営責任者でした。と言うより、最初の数年は彼の親戚が所有する牧場を会場にしていたのですから、事実上は彼が始めた大会と言えるでしょう。

2008年、まだまだクロスフィット・ゲームズが世間的に知名度があまりなかった頃、カストロがこんなことを言っていたという動画が話題を呼んでいます。

https://imgur.com/a/2008-cf-games-documentary-every-second-counts-2xTqSTp


“If someone has to go to the hospital we are going to to take a break. … If someone gets fucking seriously hurt, you have to stop and rejudge. You don’t just continue on and fucking kill other people.


角谷訳:
もし誰かが病院に行かないといけないときは、競技を中断する。もし誰かが(ピー)ひどい怪我をしたら、そこで競技を中止して、採点を見直す。競技をただ続行して、(ピー)他の人を死なせたりはしない


言葉使いは乱暴で下品なんですが、と言うか、それがカストロ君の持ち味でもあるのですが、発言の主旨はしごくもっともで、彼が最初からムチャをしようとしていたわけではなさそうです。

しかし、今回の対応はその発言通りにはなりませんでした。カストロが人変わりしてしまっていたのか、それとも組織やスポンサーの意向で初志を貫徹できなかったのか。

CEOが公約した調査結果と新たな安全対策の発表は未だになされていません。


2024/09/23

就職するなら社長が筋トレをしている会社を選べ。Deadlift ETF

 













メタ (旧フェイスブック)の創業者兼CEOマーク・ザッカーバーグ氏は運動オタクで、柔術の大会に出場したりもします。

X(旧ツイッター)、テスラ、OpenAI、スペースX、など多くの企業を経営するイーロン・マスクは仕事人間で知られていますが、同時に筋トレや格闘技が大好きだそうです。ザッカーバーグ氏とMMAで戦う、なんて噂が流れたこともありました。

他にも、ティム・クック(アップル)、リチャード・ブランソン(ヴァージン・グループ)など、筋トレに熱心な経営者は枚挙の暇がありません。

筋トレや格闘技に取り組む経営者の企業は業績が伸びる。そんな調査結果が発表されました。





訳文: 
私が作ったDeadlift ETFは経営責任者が筋トレか格闘技をする(有酸素運動だけではない)企業だけを選びました。
そうした企業は過去4年間の株価上昇率がS&P 500を140%(2.4倍)上回っていました!


健康のために散歩を心がけています、なんて経営者は日経新聞の「私の履歴書」にも出てくるかもしれませんが、朝5時からデッドリフトで大汗かいたぜ、なんて経営者もそろそろ日本にも出てきそうなものですが。



2024/09/21

座りっぱなしでいるなら、せめてコーヒーを飲め。いくらかマシだ。ー新研究の紹介

 













一日中座っているのはカラダに悪い。仕事で仕方がない場合もあるでしょうし、休みの日についダラダラしてしまうこともあるでしょう。

その理由が何であれ、1日に8時間以上もイスやソファーに座っているような生活を続けていると、疾病率と死亡率がぐ~んと上がることは、もはや常識です。

アメリカでは最近、下のフレーズをよく見聞きするようにさえなりました。

 “sitting is the new smoking”  

長時間じっと座っているというライフスタイルはタバコを吸うことと同じなのだそうです。

分かっちゃいるけど、やめられない。そんな人は多いかと思いますが、少しは救いと言うか、気休めになるかもしれない研究結果(*1)が発表されました。

1日中座りっぱなしから来る悪影響が、コーヒーを飲むことで少しは軽減されるのだそうです。


*1. Association of daily sitting time and coffee consumption with the risk of all-cause and cardiovascular disease mortality among US adults
https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12889-024-18515-9


研究では、13年間にわたり1万人以上のアメリカ人のコーヒー習慣に関するデータを分析しました。1日6時間以上座っている、だけどコーヒーを定期的に飲む人は、コーヒーを飲まない人に比べて、あらゆる原因で死亡する可能性が1.58倍低いことが分かりました。つまりカフェインがもたらす健康効果が、運動不足に由来するリスクを相殺するらしいのです。


座りっぱなしはカラダに悪いから運動しろと言われるより、せめてコーヒーを飲みなさいと言われる方が、ずっとラクなことは間違いありません。


とは言え、別の研究(*2)では、ずっと座りっぱなしでも1時間ごとに最低4秒間以上立って動くだけで、健康リスクは軽減されるそうですので、僕ならこちらを選びます。


*2. Hourly 4-s Sprints Prevent Impairment of Postprandial Fat Metabolism from Inactivity
https://journals.lww.com/acsm-msse/fulltext/2020/10000/hourly_4_s_sprints_prevent_impairment_of.23.aspx


それか、スタバとかへ歩いて行って、コーヒーを買って帰ってくれば、もっと良いのかもしれませんね。毎時間それをするのは難しいでしょうけど。






2024/09/19

泥んこレース大手「Tough Mudder」が訴えられる。レース参加者100人以上に健康被害?

 









昨年カリフォルニア州ソノマで行われた「Tough Mudder」の参加者100人以上による集団訴訟が運営団体に対して起こされました。いくつかの地元ニュースで報じられています。

https://www.yahoo.com/news/over-100-tough-mudder-racers-020512225.html


レースの後、湿疹や吐き気などの不調をきたし、病院に駆け込んだ人が多数出たとのことです。原告側は、レースに設置された泥水にエロモナス(Aeromonas)と呼ばれるバクテリアが含まれていたため、と主張しています。

このバクテリアは水中に生息し、傷などから体内に侵入し、深刻な健康被害をもたらすことがあるとのことです。

Tough Mudderは人気のある障害物レースイベントですが、数年前にスパルタンに吸収合併されました。

Tough Mudderもスパルタンも、泥水のプールに飛び込んだり、匍匐前進するといった種目で有名です。よく"Mud Race"なんて呼ばれます。

私も何度か参加したことがあります。幸いなことに、私自身はいちども体調が悪くなったことはないのですが、確かにあまり清潔な水には見えませんでした。

「泥んこレース」なんて日本語に訳して、あちこちで紹介してきましたが、これからは「泥」の部分がなくなるかもしれません。

過去記事:アメリカで大人気の障害物レース 楽天参加で日本でもブレークの予感!




2024/09/17

日常的に運動するとお腹の脂肪まで健康的になる ー新研究の紹介

 













運動しているのに痩せない。そんな悩みを抱えている人には朗報です。

日常的に運動している人は、たとえお腹に脂肪が残っていても、その脂肪組織そのものは健康的に変わることが、ある研究(*1)で明らかになりました。


*1. Years of endurance exercise training remodel abdominal subcutaneous adipose tissue in adults with overweight or obesity.

https://www.nature.com/articles/s42255-024-01103-x


ミシガン大学の解剖学者、Jeffrey Horowitz教授が主導した研究チームは、肥満傾向がある成人の被験者を2グループに分けました。最低でも週に3回以上の運動を平均して11年以上続けているグループ16人、そして運動習慣を持たないグループ16人です。

運動グループの脂肪組織は非運動グループと比較すると、以下の特徴を有することが分かりました。


  1. 血管が増える
  2. ミトコンドリア(細胞の原動力)が増える
  3. 有益なタンパク質が増える
  4. 代謝を妨げるコラーゲンの種類が減る
  5. 炎症を引き起こす細胞が減る


体重や体脂肪率といった数値、そして見た目は変わらなくても、運動をしている人の脂肪は善玉、運動しない人の脂肪は悪玉なのでしょうか。

本当かな?とは思いますけど、Horowitz教授はメディアリリースでこう述べています。

「多くの人は年齢を重ねるにつれて体重増加を避けられませんが、私たちの研究結果によると、数か月から数年にわたって定期的に運動することは、カロリーを消費する手段であるだけでなく、体脂肪をより健康的に蓄えることができるように脂肪組織を変化させるようです」








2024/09/14

おじいちゃんが運動をすると、孫の代までアタマが良くなる。スペインの神経科学者たちが発表

 













おじいちゃんが運動をすると、孫の代までアタマが良くなる。

そんな発見(*1)が発表されました。ただし、実験マウスでの段階です。

*1. Grandfathers-to-Grandsons Transgenerational Transmission of Exercise Positive Effects on Cognitive Performance

https://www.jneurosci.org/content/44/23/e2061232024

研究を発表したのはスペイン国立研究所(CSIC)に勤務する神経科学者たち。


運動をすると認知能力が高まる、あるいは低下を抑えられることは、もはや医学上の定説ですが、それが孫の代まで遺伝するという話です。

研究では実験マスクを運動グループと非運動グループに分け、それぞれの子孫の認知能力を比較しました。運動グループに課せられた運動とは、1日40分のトレッドミル走、それを6週間続けるってものです。

結果は前述の通り、運動グループの孫世代は非運動グループの孫世代より、あらゆる角度からの認知能力テストで優れた結果を出したとのことです。その間に挟まれる2世の世代は運動をまったくしなくても、同じ結果だったそうです。

おじいちゃんが運動した効果は子どもを通り過ぎて孫に遺伝する。すごい話です。なお、この研究はオスのマウスだけに限ったそうで(理由は不明)、運動効果が性別を越えて遺伝するかどうかは今後の研究課題として残っています。




2024/09/07

運動とタイミング:血糖値を下げるには夜間がベスト













1日のうちにどのタイミングで運動をするともっとも健康に良いか? にはたくさんの研究がなされてきました。

早朝ジョグは体脂肪を効率よく消費するからダイエットに良いという研究(*1)、就寝の数時間前までに運動を終えると睡眠の質が上がると言う研究(*2)、どの時間帯でも毎日決まった時間に運動すると骨を丈夫にするという研究(*3)、などなどです。


*1. https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2022.893783/full

*2. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34416428/

*3. https://www.nature.com/articles/s41467-023-42056-1


それじゃ結局、どの時間帯に運動するのがベストなのと言いたくなりますが、たぶん答えはその人が何を求めているかによって変わってくるのでしょう。


糖尿病の人や、その心配がある人にとっては、血糖値を下げることは大切です。その目的に関すると、夜の時間帯(午後6時から12時までの間)に「穏やかからやや強い強度」の運動をすることが、血糖値コントロールにもっとも効果があるとする研究(*4)が発表されました。

*4. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/oby.24063


研究対象となったのは平均年齢47歳、平均BMI32.9 の肥満型男女186人とのことです。つまり、糖尿病の恐れが強い人たちですね。もちろん、そのカテゴリーに含まれない人でも、血糖値を上げないには越したことはありません。






カストロはInstagramで謝罪、CEOは内部メールで「まだ調査中」








Lucaさんの声明を受けて、カストロが謝罪しました。といっても、個人のインスタグラムでの話ですけど。

https://www.instagram.com/p/C_j7lCDxouo/?

「(競技を続ける)決断はクロスフィット組織が下したもので、私はその決断の責任をLucaさんや家族、そしてアスリートたちに負わせたくなかった」

「私は今までこのような状況を経験をしたことがなく、そして大きな過ちを犯してしまった。心から謝罪する」


クロスフィットCEOの方は組織関係者にメールを送ったそうです。第3者機関による調査は現在も行われている。結論が出るまでには時間がかかる。そんな内容だったとBarbendが報じています。

https://barbend.com/crossfit-ceo-don-faul-lazar-dukic-death-investigation/




2024/09/05

クロスフィット・ゲームズで死亡したLazar Đukićさんの兄弟、Luka Đukićさんが長文の声明を発表


 











クロスフィット・ゲームズで死亡事故が起きてからちょうど4週間が経ちました。CEOが約束した調査報告も新たな安全対策の発表も未だにありません。

死亡したLazar Đukićさんの兄弟、Luka Đukićさんが長文の声明を発表しました。

https://www.instagram.com/p/C_iTzwVot8_/?utm_source=ig_web_copy_link

Lukaさんもその日、選手として同じ競技に参加していました。ランと水泳に関してはLazar さんの方が上だったため、Lukaさんはその後ろを追いかける形になったいました。

いくつかのポイント:

  • カストロは最初「Lazarがつけたチップ番号はすでにゴールした」とLukaさんに伝えた。後に間違いだと別のスタッフが言った。
  • カストロが翌日のゲームズを続行すると告げたとき、Lukaさんは賛成しなかった。するとカストロは「それは君の決めることではない」と言った。
  • Lazarさんの追悼イベントに出席を求められたLukaさんはメディアからのプライバシー保護を求めたが、クロスフィットHQはその対応を約束しなかった。
  • 事故当時の動画では、Lazarさんの近くにいた2人のボランティアがパドルボートに乗って、何の救助活動を行かった。
  • Lazarさんの解剖所見では心臓マヒ等の兆候はなく、極めて健康体だった。

遺族の感情を差し引いても、カストロとクロスフィットHQの対応は酷かった。そんな風に感じられます。真実を明らかにするべきです。

2024/08/11

クロスフィット・ゲームズで死亡事故。現在までに分かっていること(適時更新)

 








クロスフィット・ゲームズは2024年度から会場をダラス・フォートワースに移して行われましたが、その初日の第1イベントで大会史上初の死亡事故が発生するという最悪の幕開けとなりました。

ちょうどパリ・オリンピックと開催時期が重なっていたため、アメリカでもあまり大きくは報道されませんでした。日本もきっとそうだったと思います。

それでもAP通信やCNNなどで記事になっています。

https://apnews.com/article/crossfit-competition-death-texas-lake-74b2aaac5962ce35dc40a3838a9a4076


こうした報道から、現時点で分かっていることを報告します。今後新たな情報が入り次第、更新します。

事実

  • 事故が発生したワークアウトは『Lake Day』。屋外で行われ、3.5マイル(5.6km)走った後で、湖を800m泳ぐものだった。
  • 死亡したアスリートはセルビア人のLazar Dukic、28歳。
  • Dukicが溺れたのはゴール直前。それまでトップグループにいた。
  • Dukicが水中から浮かんでこないことにチームが気づき、消防隊と警察の捜索が行われた。
  • Dukicは元水球の選手で、水泳は得意だった。
  • ゴール付近にはパドルボートに乗ったライフセイバーが数人配置されていたが、彼らがボードを降りて水中に入ることはなかった。

 その後の経過

  • 初日の競技はそのまま中止となった。
  • 2日目以降の競技は再開した。
  • 前年度男女チャンピオンなど、競技を棄権したアスリートは10人を越えた
  • 最終競技まで予定通り行われた。
  • クロスフィットCEOは動画で声明を発表し、警察や救急隊の調査に全面的に協力し、その結果を踏まえて今後の対応を決めると述べた。
  • クロスフィットの名を冠したイベントで、オープンウォーターやプールにかかわらず、一切の水泳を種目にすることを禁止する。解除される期限は未定。そんな内部通達が本部から出された (8月16日追加
  • Brent Fikowskiがリーダーを務め、クロスフィットのトップ選手たちが集まったグループ、Professional Fitness Athletes’ Association (PFAA)が声明を発表。以下の3つを要求。(8月21日追加
1)死亡事故に関する第三者機関の調査
2)安全対策委員会の設置
3)Dave Castroの追放




個人的見解

クロスフィットの安全対策が十分であったかどうかは、今後の調査によって明らかになると思います。誰が悪かったか、という犯人捜しはその後でもよいと思います。

ただ、競技の内容については個人的に思うことがあります。
約5㎞のランと約1㎞の水泳という組み合わせは何回か経験があるからです。

Aquathlon(アクアスロン)と言って、トライアスロンから自転車を除いたレースのことです。
僕が何回か出場したレースは、約1㎞を海で泳ぎ、その後で周囲や砂浜を5㎞走るというものでした。つまり、今回の事故が起きた競技と同じ内容、ただし、ランと水泳の順番が逆でした。

5㎞のランと1㎞の水泳を続けてやると、もちろん体力的にきついことは言うまでもありません。他人と順位を争うレースなら尚更です。

体力の限界に近づいたときに、水中を泳いでいるか、あるいは陸上を走っているか、致命的な事故が起こりやすいとすればどちらでしょうか。

トライアスロンでも、アクアスロンでも、水泳のパートが一番先に行われることには意味があるのかもしれません。






2024/06/05

筋トレはもう初心者じゃないぜって人に読んでもらいたい電子書籍 


 











https://www.amazon.co.jp/dp/B0CWB2NYN6


筋トレは一通りやってみて、大体のことは知っている。

そんな人たちに「それってホントですか?」とか「これ、知っていました?」と問いかける話題を選び、英語の文献を調べてみました。


  • 想像するだけで筋肉は強くなる?
  • 筋トレ前にお気に入りの音楽を聴くと、パワーと持久力が向上する?
  • 筋トレ中に大声で叫ぶとパワーが増す?
  • 筋トレ効果の大きさは遺伝子で決められている?
  • 遅筋と速筋の割合は変えることができる?
  • 「パワーをつけるなら高重量低回数」はウソ?
  • セット間の休息は短い方がキツイ。しかし、効果は?
  • 筋トレは週に何回がベスト?
  • 片側だけの運動は反対側の筋力リハビリにも効果がある?
  • なぜアスリートは回復を重視するのか?
  • 「トシをとると疲れがとれにくくなる」はウソ?
  • アイスバスは筋トレにはむしろ逆効果?
  • 筋肥大にたくさんのたんぱく質は必要ない?
  • 「筋トレ終了後30分以内にたんぱく質を摂取」に意味はない?
  • 動物性たんぱく質の方が植物性たんぱく質より筋肉を成長させる」はウソ?
  • プロテイン・パウダーを選ぶならオーガニック?
  • 寿命を伸ばしたいなら、筋トレをやれ?
  • 筋力不足の人は喫煙常習者と同じくらい老ける?
  • 筋トレがメンタルヘルスを改善させる?
  • 筋肉質な身体作りへの強迫観念が若い男性を蝕む?

2024/04/28

懲役27年間を経て出所したアスリートがクロスフィット・ゲームズ準々決勝ラウンドに出場


 







2024年4月25日付で『Barbend』に公開された記事に感動したので、紹介します。

コロラド州オーロラのCrossfit Mach 983でコーチを務めるトレバー・ジョーンズさんが2024年のクロスフィット・ゲームズ準々決勝ラウンドに進みました。結果は45-49歳の部で約2400人中1223位。各部門トップ200人が選ばれる準決勝ラウンドには遠く届きませんでした。

ジョーンズさんはオープン・ワークアウトに過去8年間挑み続けてきましたが、正式に登録したのは今年が初めてでした。なぜなら、ジョーンズさんは17歳のときに殺人罪で有罪となり、その後27年間を塀の中で過ごしてきたからです。

矢吹丈は少年院で「明日のために」ボクシングを学びました。丹下団平が送ってくる葉書だけが頼りでした。

ジョーンズさんにクロスフィットへの道を示したのはCrossfit Mach 983のオーナー、フレッド・デイトンさんです。

デイトンさんは刑務所内で運動を通じたリハビリを提供する非営利活動「Redemption Road Fitness Foundation」に参加していたのです。クロスフィット・トレーナーL1と L2の資格を取得するプログラムもありました。

ジョーンズさんは2018年にL1、2019年にはL2を取得。そして昨年6月、27年振りに出所したときには45歳になっていました。デイトンさんはジョーンズさんをコーチとして迎え入れました。

ジョーンズさんは次のように述べています。

「クロスフィットは私に毎日を生きるための励みと意義を与えてくれました。私が今ここにいるのは、クロスフィットが(刑務所のなか)で私にしてくれたことのおかげです」

2024/04/23

マーフの分割法:ピラミッド方式とスーパーセット方式

 













さて、もうすぐマーフの季節です。

2024年のメモリアル・デーは5月27日。それまでの1か月間は、クロスフィットではマーフをやるって決まっているからです。

  • 1600m走、プラス
  • 100回懸垂、プラス
  • 200回腕立て伏せ、プラス
  • 300回スクワット、プラス
  • 1600m走、

それも重量ベストを着けてねってクレイジーなワークアウトはもうお馴染みですね。

この通りにぶっ通しでやると大変きついものなのですが、もう少し取り組みやすくした分割法があります。

そもそもクロスフィット・ゲームズですら、20回懸垂+40回腕立て伏せ+50回スクワットを5セットでやってました。

合計の回数は同じでも、腕立てや懸垂をしながら脚を休め、スクワットをしながら腕を休めることで、ずっと楽にこなすことができます。

そもそも論で言えば、このワークアウトはきついことをするのが目的だと思いますので、根性や信念のある人はぶっ通しでやるでしょう。そうでない人には分割法は向いています。僕もここ何年かは分割法でしかやっていません。

military.com というそのまんまの名前のウェブサイトがこんなやり方を紹介しているくらいですので、分割法を恥じることはありません。

https://www.military.com/military-fitness/how-enhanced-murph-workout-will-benefit-you-during-log-pt

ピラミッド方式

  • 1セット目: 1回 懸垂、2回腕立て伏せ、3回 スクワット
  • 2セット目: 2回 懸垂、4回腕立て伏せ、6回 スクワット
  • 3セット目: 3回 懸垂、6回腕立て伏せ、9回 スクワット

この要領で回数を段階的に上げていき、
10セット目:10回 懸垂、20回腕立て伏せ、30回 スクワット を頂点にして、

そこからは
  • 11セット目: 9回 懸垂、18回腕立て伏せ、27回 スクワット
  • 12セット目: 8回 懸垂、16回腕立て伏せ、24回 スクワット
  • 13セット目: 7回 懸垂、14回腕立て伏せ、21回 スクワット
と回数を下げていき、
19セット目: 1回 懸垂、2回腕立て伏せ、3回 スクワット で終了。

スーパーセット方式

前述したクロスフィット・ゲームズでのやり方と同じように、同じ回数のセットを繰り返すものです。

5回 懸垂、10回腕立て伏せ、15回 スクワット を20セット。これはガールズWODのシンディーと同じです。

あるいは、10回 懸垂、20回腕立て伏せ、30回 スクワット を10セット。ややきつくなりますが、回数は一番数えやすいでしょう。




2024/02/27

プロのクロスフィッターは普通の人の3倍食べる

 


イギリスのフィットネス関連ウェブサイト『COACH』が興味深い記事を公開しました。

2023年のクロスフィット・ゲームズのヨーロッパ地区準決勝ラウンドに出場したアスリートたちに「いつもどんなもの食べてるの?」って尋ねて回ったものです。

あるアスリートは具体的に答え、あるアスリートはそうではなかったそうですが、何人かから1日当たり6,000カロリー以上という数字が出たそうです。

成人に健康に良いとされる摂取カロリー量は1日あたり2,000カロリーくらいですから、その3倍にあたります。

プロレスラーや日本のお相撲さんがどれだけ食べているかは知りませんが、プロのクロスフィッターも、食べる量だけを見ても一般社会とはかけ離れてきているようです。

「100語で説明するクロスフィット」には

"Keep intake to levels that will support exercise but not body fat"

(動くのに必要な分だけ食べろ、体脂肪にならないように)

とあるんだけどなあ。













「僕らはプロだから仕方なくやっているけど、普通の人は健康的な食事をした方がいいよ」とインタビューに答えたひとりが言ったそうです。