2021/06/02

フロリダ州知事がトランスジェンダーのアスリートの女性スポーツ競技参加を禁ずる法案に署名。クロスフィットはどうなる?



 6月1日、フロリダ州知事がトランスジェンダーのアスリートの女性スポーツ競技参加を禁ずる法案に署名しました(https://www.newsweek.com/florida-becomes-seventh-state-ban-transgender-athletes-girls-sports-desantis-signs-bill-1596535)。正確には、州内の教育機関が主宰するスポーツ競技の女性部門に参加するには、出生時には性別学的に女性であったという証明(出生証明書やパスポートの提示)が求められます。

同様の法律はアラバマ、アーカンソー、アイダホ、ミシシッピ、テネシー、そしてウェスト・バージニアの州にも存在し、フロリダ州は全米でも7つ目のトランスジェンダーの女性スポーツ参加を禁止する州になりました。

背景には生物学的には男性であるか、あるいはかつてそうだったアスリートが女性のスポーツ競技で優位になる事例が相次いだことがあります。最近ではコネクティカット州高校陸上競技大会で女子短距離系種目の1,2位をトランスジェンダーが独占したことが話題になりました(https://apnews.com/article/ct-state-wire-north-america-gender-identity-connecticut-sports-dcbca5cf940548628dba351f6c91bcd9)。 

政治的な背景も見逃せません。上に挙げた7州はすべて共和党の支持基盤であり、保守的な土地柄で知られています。民主党優位のいわゆる「リベラル」な州は、LGBTQへの人道的配慮を求める声が強く、このような法律が成立する余地は現在のところありません。

しかし、今回のフロリダ州での法案を支持した層は男女平等と公平をその理由に挙げています。生物学的に男女には体力差があることは明白ですので、スポーツの世界でトランスジェンダーが優位に立つことは、女性がスポーツに参加する権利を迫害するものだ、という主張です。実際のところ、高校生アスリートが大学のスポーツ奨学金を得るためには公式大会での実績が欠かせません。上記のコネクティカット州の大会3位以下に入賞した女子選手はそうした機会を不当に奪われた、と感じたとしても不思議ではありません。

クロスフィットは2019年のクロスフィットゲームズからトランスジェンダーの競技参加を認めています(https://www.them.us/story/crossfit-games-trans-policy)。

現在のところ、クロスフィット競技の女性部門でトランスジェンダーが活躍した事例はあまり聞いたことがありません。しかし、今後はそのようなケースが起きる可能性は大いにあります。ただでさえ、オリンピック・リフティングなどのパワー系種目では男女差が大きいことは言うまでもないからです。

あなたが表彰台を狙うレベルの女子選手だったとして、3人のトランスジェンダーが自分の上位にいたらどう感じるか?

クロスフィット・オープンで次のラウンドにもう少しで進めるレベルだったとして、自分の上位に生物学的には男性のアスリートがいたらどう感じるか?

今どき、LGBTへの差別意識を持っている人は少ないでしょうし、もし偏見を持っていたとしても、少なくともそれを表に出す人はさらに少ないでしょう。

しかし、自分が不利になっても、他人の存在を尊重することができるか? 我々が問われているのはそこだと思います。








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