2019/06/07

クロスフィットがフェイスブックに喧嘩を売るわけ


524日にクロスフィットがフェイスブックとその傘下のインスタグラムから全ての公式アカウントを削除したというニュースは多くのクロスフィッターを驚かせました。

クロスフィットは初期のころからソーシャルメディアとは密接な関係にありました。そもそもクロスフィットなるものを知ったきっかけがソーシャルメディアだったという人も多いでしょう。かく言う私もその1人です。

2週間たった今でも、状況は変わっていません。どうやらクロスフィットのフェイスブック離れは本気のようです。クロスフィット本部ウェブサイトの公式発表ではフェイスブックがメンバーのプライベート情報を恣意的に利用していることを理由に挙げています。

同じようにフェイスブックのプライバシー管理に不満を表明する会社や組織は数多くありますが、実際に反対行動に出た会社はさほど多くありません。

そのため、クロスフィットが取ったこの行動はスポーツやフィットネス関係以外からも広く注目を集めています。一般大手マスコミはもちろんのこと、ついには最も権威がある経済専門紙のWall Street Journalまでもが特集記事(528日付: https://www.wsj.com/articles/crossfit-leaves-facebook-11559085441)を掲載しています。

ところが、どうも日本のマスコミはこの話題を無視しているようです。NHKも朝日新聞も日経新聞も報道した気配はありません。

日本ではクロスフィットの知名度がまだ低いからだよ、という側面もあるでしょうが、インターネットの巨人であるフェイスブックに喧嘩を売る会社が現れたことの意味をわかっていないのではないだろうか、と他人事ながら心配にもなります。
  

Banting 7 Day Meal Plansとは?

今回の騒動のそもそものきっかけとなったのは、クロスフィットとは無関係の「Banting 7 Day Meal Plans」というフェイスブックの1グループが一旦削除され、しばらくして復活したという出来事です。
このグループを主宰しているのは南アフリカにある同名の会社あるいは組織で、160万人と言われるメンバーの多くも南アフリカの人で占められています。
今回のことがあるまで、殆どのクロスフィッターは「Banting 7 Day Meal Plans」の名を耳にしたことはなかったでしょう。私も全く知りませんでした。南アフリカ? あまりクロスフィットと関係が深そうには思えません。
このグループは一言でいえば、低炭水化物、高脂肪の食品レシピの情報を交換する場です。加工食品はなるべく使用せず、出来るだけ自然の食品を選択することを勧めています。彼らはあまり運動には関心がなく、食生活を改善する主要な目的はダイエットのようですが、食品に関してはクロスフィットが推奨する栄養学と共通する部分が多い団体です。
このグループのメンバー情報がフェイスブックによって恣意的に政府や大手食品会社などに使われている、クロスフィットのメンバー情報も同じ目に会う前にオサラバしよう、クロスフィットのボス、グラスマンのおっさんはそう考えたらしいです。

グラスマンの真の敵は?

今年になってからクロスフィット本部のウェブサイトが刷新され、健康や食品に関する情報がメインに取り扱われるようになりました。中でもBattlesというセクションにはクロスフィットが抱えている数多くの訴訟についての説明がこれでもかと掲載されています。
訴訟の相手の多くは政府機関、食品会社、学術団体、グラスマンが「敵」と呼ぶ権威です。グラスマンによれば、彼らのせいで現代人は間違った栄養学や常識を刷り込まれ、多くの疾病の危機にさらされているということです。

もちろん、フェイスブックから離れた理由についても説明があります。
https://www.crossfit.com/battles/crossfit-suspends-facebook-instagram
クラスマンの主張が正しいか否かはともかくとして、最初にフェイスブックのやり玉に挙がったのが食と健康に関してクロスフィットと同じ思想を共有するグループでなければ、クロスフィットがフェイスブックから離れるという事象にはつながらなかったのではないか。そんな気がします。プライバシー云々は後付けの理由ではないかとまで疑ってしまいます。

 フェイスブックから離れることによる影響は?

削除される前のクロスフィット関係グループのメンバー数はおよそ以下の通りでした。
クロスフィット本部フェイスブック:310万人
クロスフィット・ゲームズのフェイスブック:270万人
クロスフィット本部インスタグラム:240万人
クロスフィット・ゲームズのインスタグラム:280万人

つまり、全部合わせると、クロスフィットは約1000万人のファンに情報を発信するチャンネルを失ったということになります。
ツイッターとYoutubeはそのまま残っているとは言え、短期的にも将来的にも、マーケティングやブランドに与える影響は大きいと言えるでしょう。

もちろん、そんなことはグラスマンのおっさんもわかってはいるはずで、彼が言う「真の敵」との闘いが持つ意味はそうした経営的な損得勘定より優先するようです。

クロスフィットに続く会社はあるか?

そうなりますと、次なる問題はクロスフィットに同調してフェイスブックから離れる会社はあるか? です。
今のところ、そのような目立った動きはありません。フェイスブックにはプライバシーに関して重大な問題があることは承知していても、それでも顧客とのチャンネルを失うわけにはいかない、そんな会社が殆どのようです。そのことは、クロスフィットのボックスの多くまでもが今でもフェイスブックを利用し続けていることからでも容易に想像出来ます。

もしグラスマンのおっさんが暴走老人と化して、「クロスフィットのアフィリエイトでいるためにはフェイスブックの利用を禁じる」なんて条件を作るようなことがあれば話は別ですが、多分そこまでは出来ないでしょう。ただ、良くも悪くも業界のバッドボーイであり続けたグラスマンのこと、将来に何が起きるかは誰にもわかりません。

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