筋肉を構成する筋繊維は「遅筋(赤筋)」と「速筋(白筋)」のタイプに大別されます。そして人は誰でも遅筋繊維と速筋繊維の両方を持っています。しかし、どちらがより多いかという組成比率は先天的に決まっています。
簡単に言えば、遅筋繊維の割合が大きい人は長距離走に向いていますし、速筋繊維の割合が大きい人には短距離走が向いています。マラソンランナーと100m走スプリンターの体格を比較すれば明らかです。
遅筋と速筋のどちらを多く持っているかは生まれつきであり、それは変えることはできないということが長い間の定説でした。しかし、2018年に発表された研究(*1)はその定説を否定しました。
30年間という長期間に渡って、異なる生活習慣を送ってきた一卵性双生児を調べたところ、同一だったはずの筋繊維組成が異なっていることを発見したのです。
研究対象になった双子の1人は長距離走やトライアスロンなどの耐久系スポーツを行っていて、もう1人はほとんど運動の習慣がありませんでした。この2人の筋繊維組成を調べてみたところ、耐久系アスリートは遅筋繊維がそのほとんどを占めていたのに対し、運動の習慣がない方は遅筋繊維と速筋繊維の比率がほほ半分半分だったということです。
つまり、トレーニングによって遅筋と速筋の比率を変化させることは可能だと明らかになったのです。
しかし、遅筋と速筋の先天的な比率傾向は厳然として存在します。いわばスポーツの種類に応じた適性です。どちらかを意図的に伸ばすことはできても、それには長い年月がかかります。
現在の自分が遅筋優位タイプなのかそれとも速筋優位タイプなのかを知りたい人は、厳密には生体組織検査を受けるしかありません。筋肉を切り取り、医学的に分析してもらうわけです。想像するだけで痛そうです。
そんな大げさなことはしたくないという人は多いでしょう。医学的なアプローチとは別に、誰でも簡単に筋繊維比率を「推測」する方法には以下のものがあります。
- 垂直跳びの記録が男性は50cm以上、女性は35cm以上なら、その人は速筋優位
- 1-rep max の80%でバックスクワットを限界まで行い、8回以下なら速筋優位、11回以上なら遅筋優位
2の方法は私のでっちあげではなく、2023年に発表された研究(*2)に基づいています。
速筋優位タイプは1回挙げるだけの最大重量(1-rep max)は遅筋優位タイプよりやや優位なのですが、その80%の重量で10回3セットやれと言われるとできないらしいのです。
簡単な判別方法なので、試してみてはいかがでしょうか。